技巧に走って肝心のところがおろそかになってしまったって感じです。狂言を取り入れた絵作りはほんとかっこいいし、完成度高いなあって思う。思うんだけど、話が全然先にすすまないんです。
爆弾という題名にあるように、爆弾の話なんだけど映画が始まって半分以上過ぎないとでてこない。爆弾が巡り巡って自分のところに戻ってきてしまうというのがこの話の肝だと思うんだけど、それが始まるのが残り3分の1ぐらいになってからと遅すぎる。
それまで何をやっているかというと、服役していた組長の伊藤雄之助が出所すると、組がのっとられていて、選挙事務所になってしまっていた。追い出された伊藤雄之助は復讐を計画するのだが……っていう前提の描写を延々とやってるのです。
いや、はやく本題行ってくれないかな?みたいな。映像はほんと凝ってる。俳優が狂言風のセリフ回しをやって、よ~~~~!ポンっみたいな狂言のBGMが流れ、かっこいいカメラアングルで撮影される映像で、すごい様式美なんだけど、間が持たない。
策士策に溺れる。そう感じたなあ。万年筆型爆弾を仕掛けてこれでどかんと一発だと思ってると、万年筆は巡り巡って伊藤雄之助のもとに戻ってきてしまう。爆死は免れたけど、恐怖とショックでよいよいになってしまう伊藤雄之助。
これで終わりじゃなくて、もう一発、今度はゴルフボール爆弾でっていう話もあるんだけど、これも爆弾作った本人のところに返ってきて爆発という終わり方です。
うーん、やっぱり前半が中だるみしすぎている。凝った映像と演出を楽しめる人なら、楽しく見てられるんだろうけど、話が足踏みしてると感じる人だとけっこうきついよ。
いやー、見る度に味がでる隙がない映像なんですけどね。元組員たちがなぜか野球帽かぶって選挙事務所の所員やってるのとかおかしくて好きだけどね。とうちゃんの空手チョップがどうしたこうしたみたいなヘンテコソングもおもしろい。伊藤雄之助の顔もおもしろいし。でも映画としておもしろいのかっていうと、残念ながらあまりおもしろくないというね。
技巧っていうのは、技巧として意識させてしまっては効力が失われてしまう。凝ったことしてるなあって思ってしまうということは、映画に没入できていないということだから。テクニックが目立ってしまうテクニックはつまらない。
話の展開が映像のドライブと同期してドライブしてくれていれば技巧のことなんか抜きに楽しめただろう。原作はコーネル・ウールリッチの「万年筆」というミステリ小説らしいですが、それをよくぞここまで和風テイストに仕上げたもんですね。
岡本喜八監督の美意識が映像と音の隅々までいきわたってる作品なので、また見返して見たら気分によってすごく乗れるときもあるかもです。