ただちょっとやりすぎ感はあります。かちゃかちゃと細かく画面が切り替わる、カメラがゆらゆら揺れる、急なズームをする、とにかく慌ただしいカメラワークと編集で、忙しすぎて何が起きてるのか一瞬よくわからなかったりしました。
本家ボーン・シリーズも第1作目のボーン・アイデンティティーはそれほどでもなかったけど、シリーズを重ねるごとに映像のがちゃがちゃ感が増して、カメラ揺らしすぎ、ズームしすぎ、画面切り替わりすぎになってましたね。
こういう慌ただしい忙しい映像の撮り方と編集は、臨場感は演出されるのは確かなんすけど、やりすぎは見てて疲れちゃうからよくない。ちょっとやりすぎだと感じました。それと追跡シーンやカーチェイスのシーンが長すぎるのも気になります。
まあ、売りというか、この映画のちから入ってるところなので、たくさん見せたいのはわかる。けど、長すぎです。カークラッシュとかすごい迫力ある映像になってるんだけど、長いのでインパクトが薄れるんです。逃走、追跡のシーンとかカーチェイスとか始まったときは、すごい迫力だって思うんだけど、長いので、まだやってるよ、いつ終わるんだろって、気持ちが下がってしまう。
逃走やカーチェイスのシーンを半分ぐらいの長さにして、映画の上映時間を2時間切るぐらいにしてくれたほうがよかったと思う。
お話はなんかちょっとややこしかった。脱北者の元工作員が妻を殺した犯人を探すうちに、大きな裏の犯罪に巻き込まれていくっていうサスペンス。お世話になってる会長が殺されて容疑者になって追われる主人公。
会長はメガネに隠したマイクロフィルムの情報をめぐっての争いで殺されたらしい。主人公のコン・ユは、逃げながら事の真相に近づいていく。それをアクションを交えながら見せていく。ジェイソン・ボーンシリーズにも、こんな話あったようななかったような。映像のテイストも話の展開もボーンをお手本にしたんでしょうね。
コン・ユに取材を申し込んでいたジャーナリストの女性の助けもありながらっていうのも、なんかマット・デイモンのボーンのどれかであったような話だなと。亜流感は否めないけども、クオリティは高いんですよねえ。本家と同レベル、もしくはそれ以上にうまく作ってると感じちゃう。それに韓国は現実の北朝鮮との緊張状態を映画にもちこんでるので、フィクションにもどことなく現実味が感じられるのが強い。
リアリティとか全然ない、トム・クルーズとかが主演してるスパイ映画みたいな内容なんだけどね。メガネに仕込まれた謎の化学式が実はっていう展開もかなりファンタジーだった。その化学式を細菌兵器だと勘違いした諜報部のやつがそれを武器商人に売ろうとしたら、それは兵器じゃなくて、貧弱な土地でも育つ小麦の化学式だったというね。これで北の食糧難問題が解決するって、すごいファンタジー。
ハリウッド映画的なフィクションばりばりのスパイ・アクションをやっていても、北朝鮮工作員とか出てくると、ノンフィクションのような重みをそこに感じてしまう。そこが強いですよねえ。
これを日本映画がやるのは難しい。日本でスパイとか工作員とか言われても、そんなのありえないって思っちゃうから、漫画とかファンタジーとかに舞台を現実とは異なるとこにしないと難しい。日本映画では刑事ものはできても、現代を舞台にスパイものとか軍隊ものとかができないのが悲しい。
日本でもこういうの見たいけどなあ。西部警察で我慢しますか。
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