というのも長いから。227分。DVD2枚。いやーきついですよ。長過ぎる。見始めると全然見れるんだろうと思ったけど、見ようと思うまでに時間がかかった感じです。気合いれて、よし見るぞと。今見ないと一生見ないぞと。
で、見てみたんですけど、いやあ、見れるもんですね。かなり古い映画なのでどうかなと思ってたけど、見れますね。長さも長いことは長いし、そこそんなに時間使う?みたいなシーンが前半は多いように感じるけど、全然見れましたね。
なんだろ。不思議と退屈にはならない。砂漠でラクダ乗ってるだけのシーンとかも、全然退屈には感じません。物語の進め方がうまいからかな?最初、ピーター・オトゥール演じるロレンスがバイク事故で死ぬところから始まるんすよ。
葬式に集まった知り合いたちが、新聞記者に彼はどんな人だったと聞かれて、よくわからんやつだとか、変わり者だったとか答える。ロレンスという男がとらえどころがない、不思議な正体不明なやつだったというところからスタートする。
そこから時間がさかのぼって、ロレンスがアラビアに派遣されて何をしていくかというのを描いていく。この構造がうまいんだろね。謎をなげかけて、その謎へのアンサーが描かれていく。そして最後、見終わったときに観客はロレンスという男がどんなやつだったのか、それぞれ思い思いに考える。
そういう感じに仕向けるように作られてる。やっぱそういう構造的に優れてるから、今でも名作として語られてるんすねえ。ただ砂漠でロケした壮大な映像だけの映画なら、名作とまでは言われない。
T・E・ロレンスは実在の人物で、イギリス軍人でアラビアを束ねてトルコ軍と戦った人らしいです。この映画で描かれたような活躍をしたのなら、スーパーマンじゃないか。こんなことありえるのかみたいな神業を成し遂げてます。
アラブに派遣されて現地人に認められるまでに現地に馴染む。アラブ人の部隊を束ねて、各地でゲリラ戦を行う。重要拠点を攻略する作戦を考案し実行し成功させる。え、どういうこと?みたいな。ただの一将校ができることを超えてるような。
そういう軍事的な輝かしい戦績だけでなく、後半は心理的なダークサイドを描いていく。敵に捕まって拷問をうけてからロレンスの精神が破壊されておかしくなっていったという描写が続きます。
完全におかしくなっちゃうんすよ。もうやだと任務をおりて将校クラブに久しぶりに戻っていくロレンスの挙動が変すぎる。子供のようというか、ゲイっぽいというか、ふにゃふにゃでおかしいんすよ。
前半でもちょっとゲイっぽい身のこなしや佇まいだなって思うところはありました。寝転んでるシーンとか、なんか女性っぽいし。世話係として少年を雇ってたりしてたし。それが拷問で鞭打ちくらってから、露骨にそういう女性っぽい描き方が加速してたような気がします。
まあ、ゲイっていうか、精神的なショックが大きすぎて幼児化してしまったとも見えたけどね。そういう演技をピーター・オトゥールがしてました。拷問シーンもなんか変なんだよなあ。妙に変態プレイっぽいムードが強調されてた。SM覗きプレイかみたいな?
そんな変態拷問をうけて、ロレンスは精神破壊状態になってるんだけど、また派遣される。そして虐殺を指揮する。皆殺しだ~って血まみれになるロレンス。前半では戦場でも理性を失わない人として描かれていたのに、後半はもうダークサイド全開ですよ。精神的にプッツンしちゃったみたいな。
そして最後は、物悲しい。アラブ人とともにアラブのために戦ったのも、それはイギリスの国益のためにすぎず、すべては虚しい幻の日々だったのかみたいな。車で去っていくロレンスの表情がフロントガラスが汚れていてよく見えないのが印象的だったなあ。
ピーター・オトゥールがなんともいえない表情してるのがかすかに見える。それがなんかいいですよね。心に残る。ロレンスとはいったいなんだったのか。まあ、結局、謎ですけどね。謎で始まってたそがれて終わる。
なんかよかったですよ。長いので気軽に何度も見ようとは思わないけど1年に1回ぐらいは見てもいいんじゃないすかね。