おもしろい。 うーむ、おもしろかったなあ。
いやー、おもしろい。岡田以蔵の話なんすけど、
これはほんとおもしろかったっすね。 何がいいって 血なまぐさい狂った熱気が
映像に焼き付いてるとこですね。
邪魔なやつは切り捨てられた
テロリズムあふれるあの時代の京都。天誅!なあの時代を映画化している作品は多いけども、
ここまで殺伐とした空気を 映像にできてるものは他にないんじゃないすかねえ。
ほんとピリピリしてて 命のやりとり、生き死にのやりとりを
している男たちっていうムードが充満している。
役者の演技もすごいんだ、狂気が。オープニングの勝新太郎が
日本刀をフルスイングしまくって 暴れまわるシーンからして怖いんだ。
田舎でくすぶって、 食いつめ浪人のまま、
俺は終わるのか、いや、そんなのたまらないという気持ちが あふれ出てる。
そんな男が人斬りの才能を仲代達矢に買われて 生き生きと躍動する。
躍動する人斬り。 怖い。すごいんすよ。 勝新太郎の躍動する殺陣。
俺の生きる道はこれだ!と
人殺しの才能に目覚めて生き生きする人殺しの目。切れる肉体。躍動する人殺し。うーむ、すごい迫力だ。三島由紀夫が岡田以蔵に並ぶ人斬りの
田中新兵衛役をやってんすけど、これもいいんすよ。
三島由紀夫は全然演技はうまくないんすよ。「からっ風野郎」とか笑っちゃうでしょ。
でもこの映画の三島はいい。 がちがちに緊張してるのか、
こわばった表情で演技してるんだけど、 その緊張が人斬りとしての緊張感、
狂気を感じさせるように作用してて 良い演技に見えるんすよ。
こいつほんとにやばいなみたいな雰囲気。 なんかいっちゃってる目つきしてて
それがほんとに人斬りっぽさを醸し出してて これはいい三島由紀夫でしたねえ。
仲代達矢のソフトでスタイリッシュな見かけだけど 腹の中は人を利用して
いらなくなったら捨てるだけという 冷徹さを感じさせる演技もさすが。
いやー、とにかく役者たちの鬼気迫る雰囲気が ほんとすごいんだなあ。
勝新太郎のベスト演技はこの映画じゃないのかね。
脂が乗りにのってる感がすごかったっすねえ。 勝新ってこんなにすごいんだと
あらためて感じたもんなあ。 躍動する野生児。
あと、映像がいいですね。 影をふんだんに使った絵作り。
なんか市川崑っぽいような映像に思ったなあ。 それに殺陣の迫力ね。 なんなんだろ。
これほど血しぶきを感じる日本刀での戦闘シーンを 見たことないっすね。
血糊がペンキっぽいのがちょっとなあっていうのが あるんだけど、
とにかく迫力という点では 他の時代劇を圧倒してる出来栄え。
ほんとに人斬ってんじゃないの?みたいな。 ぎりぎりと首に刀を押し当てて
じわじわ死んでいくとか、 刀をぶっさして血がどくどくでてくるとか、
うわーっていうね。
お話もいいんだよ。 何かを成し遂げたくて 田舎からでてきて、
人斬りの才能でのし上がっていくが 政治家の飼い犬として
いいように使われていただけだった。 絶望を味わい、
最後は自由になるために死を選ぶみたいな。
男の立身出世を夢見て破れる悲哀っていうかねえ。 そういうお話でよかったっすね。
俳優良し。 映像良し。 物語良し。 三拍子そろった時代劇っすね。