この長さが人生のアップダウン紆余曲折を感じさせるから別に悪くはなかった。もうちょっとアップの面をきらびやかに派手に描いてほしかったですね。そんなに成功してないじゃんみたいに思えたし。
ちょっと読心術ショーがうけて、心霊相談に手を出し始めたぐらいでたいして成功してない。権力者に取り入って成功する前に転落してしまうから、成功者から転落者へという落差があまり感じられない。結局、ケチな流れ者で最初から最後まで終わったんだなっていうね。
成功のでかさを描くからそこから落ちるドラマもドラマチックになるわけだし。最初から最後までしみったれた話だったなあみたいな。
最初の生き延びるだけのその日暮らしの描写は詳しく描いてます。移動見世物小屋に拾われてそこで下働きしながら読心術の見世物やる老人を父親がわりに芸を覚えてっていう見世物小屋での暮らしはよく描けています。
なんかあの見世物小屋での生活って人生そのものって感じしましたね。人生とは移動見世物小屋みたいなもので、自分はそこでインチキの演し物を演じているケチな野郎、もしくは見物して自分はこうじゃないと思い込もうとする側かみたいな。
どっちにしても成功者には程遠く、地の底で這い回るしかない。
獣人の見世物があるんだけど、獣人と紹介されてる男は獣人でもなんでもない。行き場のない、人生に絶望したただのホームレスをつれてきて、酒とドラッグで酩酊させて獣人に仕立て上げてるだけ。あれが自分なんじゃないかと思えてなんか悲しくなったな。
主人公のブラッドリー・クーパーも、最後に獣人やってみねえか?って言われて、断らないんだもんなあ。それはわたしの天職ですよって笑って引き受ける。もう、気持ちが折れちゃって再起する気力もない、助けてくれる人もいない。
人生あきらめモード。ほんと辛い。人生って辛いだけだなあみたいな。わざわざ映画見て人生の辛さを再確認ってつらすぎる。こんな映画を見てる場合じゃないよ。こういうのは若い人向けですね。十代や20歳そこらの子なら、人生これからで残り時間も莫大にあるので、こういう話も単なる娯楽として見て楽しめるだろう。