てっきり石原裕次郎がパパとして子育てに奮闘する映画かと思って見てたんすけど、どうもそんな感じではなかったですね。昔の価値観では父親は黙ってスパルタ。子供と対話するよりも、父親としての威厳を行動で示すのが良い親だみたいなとこあるんだろうなあ。
球審としての仕事ぶりをけっこうしっかりと描きます。プロ野球は夜の試合だから、石原裕次郎は家に帰ってきて昼間は寝てる。それでまたナイターで審判やって、あちこち地方の球場にも行くから、子供たちとちゃんと接する機会がありません。
そのせいないのか、子供たちはやんちゃで、遊びに連れて行ってくれないストレスを、団地の他の住人の家の窓を割ったり、花壇をあらしたり、配達の牛乳瓶をわったり、ゴミ箱を壊してゴミを散乱させたりします。
なので近所からの評判がすこぶる悪い。奥さん連中に嫌味をいわれる若尾文子。球審やめて工場で働いて欲しいって思ってるんだけど、石原裕次郎は元投手で怪我で引退してるので野球にかかわる仕事がしたいのでやめるつもりはない。
子供が悪さするのも、元気があってそれぐらいがいいんだぐらいにしか思っていません。
今の感覚で見ると、なかなか厳しい描かれ方が多かったです。四の五の理屈をこねる若いやつは、ぶっ倒れるまでうさぎ跳びでもさせて体が悲鳴をあげるまでしごいてやれば、文句も言わなくなるさ的な。
まあ、昔はそうですよねえ。今もたいして変わらないか。子供はかわいい。でも子供の相手はめんどくさい。そんなもんでしょうね。で、映画のほうなんですけど、よくわからない展開をします。
石原裕次郎のところに出場停止になった野球選手の渡哲也がやっかいになると出入りすることになります。石原裕次郎と渡哲也が女子校のバレー部のコーチを頼まれて、女子バレー部をしごくシーンとかあります。
なぜか上半身裸でバレー部員たちに檄を飛ばす渡哲也。なんかやばい奴に見えたなあ。昔はこういうのも、ただのしごきや熱血コーチってことなんだろうけど、今じゃ普通にただのセクハラだけどね。
またあるときは、急病で亡くなった球審仲間の娘が不良で、学生運動の真似事をしてて学校に立てこもってると聞いて乗り込んでいきます。自己反省がどうのこうのとか、そんなの古くてナンセンスだとか、小難しいことをごちゃごちゃ抜かす若いやつらを腕力でけちらす石原裕次郎と渡哲也。
シンナーを吸ってラリってるやつらをはっ倒す石原裕次郎。かまってほしいという子供たちに、ならばスパルタでいくぞと、ランニングしたり水のシャワーを浴びせたりとかします。肉体を疲れさせるまで鍛える、肉体を追い込むことで、若者の悩みとかだらけた精神は矯正できるという理論です。
まあ、それも一理あるような気がしちゃうけど、そういう問題か?って気もするね。後半、なぜか舞台は田舎の漁港に移動します。子供の教育について、考えがすれ違う若尾文子と石原裕次郎。
少し離れたほうがいいかもと、石原裕次郎の父親の住んでる田舎に子供たちと若尾文子が遊びにいくんだけど、その漁港町ではバイクに乗った不良ヒッピーたちが暴れまわっているのだった。
なんだ、この展開。浜を荒らしたり、家を破壊したりとやりたい放題のヒッピーたち。うーん、もう少しの辛抱だと手出しできない漁港のおじさんたち。そこに若尾文子と子供に会いに車を飛ばしてきた石原裕次郎登場。
ヒッピーどもをボッコボコにします。渡哲也も助太刀にあらわれて、なぜか上半身ハダカで暴れまわる。すげえ、パパってこんなに強いんだって子供たちは石原裕次郎パパを見直します。
球審やっているときは、判定に不満をいう選手に乱暴されても手を出し返さないから、てっきりパパは弱虫だと子供たちは思っていたわけ。でもそれは違ったのがわかって子供たちは父親を尊敬するようになる。
まあ、なんか古き良きというか、悪きですかね、父とは仕事をする背中を子供たちに見せて、ここぞというときに頼りになるのがあるべき姿だ的な価値観。それが理想の父親像。
結局、腕力が強いことが重要っていうような考え方なんだよなあ。腕っぷしの強さは、理屈や感情を全部おおいつくしてしまう。しのごの言うなっていうね。若いやつがだらけたり、わがままいうのは、大人が強くでないからだっていうね。まあ、それが父親のほうもめんどくさくなくていいんだろうな。
いちいち子供の話聞いて子供にあわせてやるなんてことやってられないから。子供のほうが勝手に父親の姿を見て考えてくれたら楽だもの。
話は変で奇妙な映画だったけど、映像的にはおもしろくて楽しかったですね。子供であふれてる団地の風景とかさ。昔の車とかバイクとか町並みとか、映画の内容よりもそっちがおもしろかったりする。
若尾文子が見てるテレビに織戸組という建設会社のCMが何度か流れるシーンがあったけど、あれはスポンサーだからかな?昔の映画は映画内でスポンサーの宣伝が唐突に始まることがあってそれもなんだかおもしろいですね。