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『スカーフェイス(原題:SCARFACE)』【映画のあらすじとネタバレ感想】アル・パチーノ主演の成り上がりギャングコント


無一文のキューバ移民、トニー・モンタナが裏社会でのし上がり、麻薬王になってすべてを手にして破滅する物語。もはやマンガ。漫画というよりコントかな。いやあ、悪い意味でマンガっぽいっていうわけじゃなく、設定も描かれ方も映像の感じも俳優の演技もすべてがマンガっぽい。徹底してるっていうかね。過剰ではっきりしてる。

俺は飢えてるんだぞ~、俺はのし上がるぞ~、手に入れたいものは全部手にするぞ~っていうわかりやすい演技をするアル・パチーノ筆頭に、ギャングの情婦で贅沢三昧の生活に飽き飽きして、何が起きても白けてるミシェル・ファイファーとか、出てくるやつのキャラ設定がしっかりしてて、コントにしか見えない。

ギャングコント。アル・パチーノの髪型もなんか短髪なのにカツラみたいに見えるし。ビートたけしは、スカーフェイスのつもりでアウトレイジやってたんだろうなあ。ミシェル・ファイファーが最高です。ギャングの女で危ない男たちといるのに、すべてが退屈で仕方ないっていう冷めきった態度が最高におもしろい。

ちょっと男たちを小馬鹿に見てるし。バカな男たちだみたいな白けムード。そんなバカな男たちのお金で、毎日髪と顔と体の手入れをして、コカイン吸って寝てという生活を淡々と続けてる女っていう演技が最高ですよ。空虚なんだよなあ。

アル・パチーノは、最初ギラギラしてんの。持たざるものの強さで、何も怖いものがないので大物にも堂々とわたりあって話をつけていく。殺しも簡単にやってのける。あまりにも肝が座ってるから、度胸をかわれてギャングのボスに重宝されてどんどんのし上がっていきます。

まあ、ボスのほうは危ない仕事に使える使い捨て要員ぐらいに思ってて、アル・パチーノのほうもそう思われてるのはわかってます。だから組織の中でうまくやっていこうとか、上の人間に気に入られようとか一切なし。本音で俺がしたいようにすると突き進む。

危ないヤクの取引を成功させ、どんどん羽振りがよくなっていく。やりすぎってことで、ついにはボスから刺客を放たれて殺されかかるんだけど返り討ちにして、自分がボスになり麻薬王ですよ。ボスの女であるミシェル・ファイファーに夢中になって彼女も手に入れてしまう。

内装を黒色と金色で設えた部屋のある宮殿のような豪邸に住みます。悪魔城かみたいな。庭にはトラを飼って、お金はうなるほどあり、いい女も手に入れ、何もかも成功により手にしたかにみえたアル・パチーノだけど、全然幸せに見えません。空虚で虚ろな様子で、コカイン中毒でいつもうつろでぶっ飛んでる。

前半のアル・パチーノは成功するぞとドーパミンでまくってぶっ飛んでるんだけど、後半の成功してからのアル・パチーノは同じようにぶっ飛んでるんだけど、薬で錯乱してぶっ飛んでる感じなんすよ。

自分のやったことで、あとになって、俺はなぜこんなことをしたんだ?って自分で自分がわからないみたいになってます。暗殺の仕事で、標的の妻と子供を一緒に始末しようとした殺し屋を衝動的に殺してしまう。妹といい仲になった相棒をかっとなって撃ち殺してしまう。

もうね、むちゃくちゃ。無関係な女と子供は殺さない主義といえば、なんだか立派な気がしてしまうけど、アル・パチーノがラリってて正気じゃないのでただただおかしいやつにしか見えない。

妹に関しても、異常な執着心をもってて、あれはやっぱり妹に親族以上の感情をもってるからなんでしょうか。妹思いな兄貴にはまったく見えない。最後に妹がわたしと寝たいんでしょって言ってたけどやっぱそうなのかな?

お金さえ手に入れたら女も車も家も幸せも何もかも手にできる。それがアメリカだとアル・パチーノは血みどろの戦いを勝ち抜けてゴールした。大金を手にしたら幸せになれるはずが、何も手にしてない。

母親からは、ヤクザ丸出しの姿で汚いことしてお金稼いでおまえはろくでなしだと認めてもらえない。全部オレの手柄、俺が命はって手に入れたと言い、成功をともにわかちあう仲間もいない。最高の女ミシェル・ファイファーと結婚してもうまく家庭を築けない。

おかしいな。なんでもやって成功してビッグなマネーを手にしたら、幸せになれるんじゃないのか?ってトニー・モンタナは戸惑っていたのかもしれないですね。お金もある。あれもこれも手に入れた。なのになぜ俺は幸せを感じられないんだ。

アル・パチーノ演じるトニー・モンタナってちょっと頭悪そうな感じっていうか、直情的な男って感じなので、本気でなぜ幸せになれないのかわからないと思ってそうで、なんか怖かったです。

母親や妹、相棒や嫁、組織の人間や商売相手。人として彼らとちゃんと関わろうっていう気が最初からない。とにかくお金。成功してお金を手にしたら、みんな態度かわるだろ、おれの思うようになるだろっていう思考。

そういう孤独なわからず屋の最後は壮絶な最後です。邸宅に攻めてこられる。なんかこのシーンもコントみたいでちょっと笑えます。攻めてくる軍団がなんか忍者軍団みたいでなんか笑っちゃうし、アル・パチーノにとどめを刺す男がでっかいサングラス男でなんか笑っちゃうし、どことなくジョン・ウー映画っぽい気がしました。

ブライアン・デ・パルマ監督ってアクションはあんまりうまくないんだな。映像の魔術師だけど。そんでボディガードとか仲間とかどんどんやられて最後アル・パチーノ一人になる。グレネードとか発射してすごいハイテンションで応戦。

しかし多勢に無勢。アル・パチーノは蜂の巣になるんだけど、めちゃくちゃに撃たれても、俺は死なねえぞ、おら、撃ってみろ、俺はまだ生きてるぞ、こんなんじゃ死なねえぞと仁王立ちです。そこを後ろからとどめをさされて二階から1階の池に落ちてジエンド。

最後の瞬間まで、戦って勝って金を手にしたら幸福になれると疑わなかった孤独な男の末路がこれ。なんか悲しくなっちゃう映画だったなあ。お金さえ手にすれば幸福になれるという拝金主義を揶揄するような映画にも思えた。

頭悪いギャング映画っぽさを装った実は賢い系社会派映画なのかもしれない。見所はアル・パチーノの自分で自分がわからない錯乱した演技。ミシェル・ファイファーの退屈でたまらないわ演技。

チェーンソーのシーン、二人組の刺客に狙われるシーン、裏切り者がヘリコプターから首釣られるシーン、妹が撃たれるシーン、最後の仁王立ちシーンですかね。


YouTubeにシーンごとの動画があるので、それだけ見たらいいかも。いいシーンだけYoutubeに公式動画があがってるから手軽に見れていい時代だなあ。

DMM動画で「スカーフェイス」を見る


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