若者たちのっていうけどさ、演じている俳優がおじさんたちなので、すでに違和感がすごいです。窪塚俊介が、若者ぶった演技してるのが無理ありすぎていきなりきついパンチをくらった。わざと幼い感じで演技してるんだけどさ、ちょっとというかかなりきつい。
一応17歳という設定みたいなんだけど、満島真之介の体つきは中年おじさんだし、身体が不自由で変わり者っていう設定の長塚俊介は戦隊モノに出てくる怪人みたいだし、全然若者じゃないんすよ。
これは十代の俳優を使ってほしかったなあ。女優陣も癖が強い。あやしげなマダム、常盤貴子。肺病の矢作穂香。友達の山崎紘菜、門脇麦。全員癖の強い演技をしてる。門脇麦なんかときどきからくり人形に見えたもんなあ。あの喋り方なんなんだいったい。
すべてが奇妙なテイストで描かれる。接吻のシーンの生々しさとか、うわーなんだよみたいな。全然美しく、ロマンチック的には作ってないんすよ。性の、生の生々しさを見せるみたいなキスシーン。あとすごかったのが、満島真之介と窪塚俊介が全裸で馬にのって駆け回るシーンですね。
なかなか最近お目にかかれない怪シーンでした。アッハッハーってはしゃいだおじさん二人、それも全裸が馬に二人乗りして夜の海岸を疾走。どういうことだみたいな。まあ、生のきらめきということでしょうか。
でもちょっと性の匂いもしたなあ。男同士の友情をこえた関係が見え隠れする。全裸で馬にまたがるってなんか意味深じゃないすか。頑健な肉体の持ち主というキャラクターを強調したいのか、やたらと満島真之介の裸が出てくる。いや、あんま見たくないんすけどみたいな。
女性陣の裸も出てくるのだが、こっちは肌色の全身タイツを着ているのか、CGで肌のリアル感を消しているのか、のっぺりとした質感の裸になっていました。これはどうなんだろ。もっと美しくとってほしかったような気がしますね。
そんな感じのクセの強い俳優たちの演技に、また大林宣彦マジックの合成とカメラワークが加わる。合成はいつもの合成だとわかる合成です。映像がデジタルになって、フィルム時代の合成とはまた違う味わいになってました。
なんか昔のマルチメディアとかいってたときのCD-ROMアートみたいな映像で、この映画っていつ作られたのか不明だなみたいな制作年代不明感を醸し出してました。カメラワークも独特のリズムですよねえ。
頻繁に画面に並んでうつっている人物の左右が入れ替わるんだけど、あれはどういう意図なんだろう?右にいた人がカットがきりかわると左にいて、左の人が右の映像になったかと思ったら、次のカットではまたもとの配置になってたりと、そういう映像が頻繁に出てくる。
なぜそういう画作りをしているのかはよくわかりません。でも、なんだろう?って意味を考えちゃいますよね。右左右左ってなるのは、その二人の人物が一体化しているというか、一体感を感じているという表現なのかとか。精神の融合的ななにかなのかとか。
意味を考えるといえば、この映画自体の意味も考えちゃう。大林宣彦監督は戦争はよくないというメッセージを映画にこめたんだろう。戦争によって若者たちの青春がなんでもない青春ではなくなってしまうさまを描くことで、戦争を描く。
それはわかるんだけど、とにかく俳優の怪演と映像の奇抜さと編集のスピード感に頭の中はいっぱいいっぱいになってしまって、戦争を考えるどころじゃなくなります。何も頭に入ってこない。とにかく奇妙なものを見たという気持ちで頭が埋め尽くされる。
常盤貴子がヴァンパイアみたいに見えたりするし。指噛んだり血を吸ったり、満島真之介とあやしい雰囲気になったりと、妖しい常盤貴子。ほとんど吸血鬼だよ。
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