川原亜矢子のぽわんとした演技、松田ケイジのフラットな演技、橋爪功の達者な演技。それらが混ざり合って、なんともいえない奇妙な空気が漂う。もう耐えられない!って感じだったけど、年取ってから見返してみると、普通に面白く見れたりするんだから奇妙なもんです。
空気というか、ムードというか、夜のムードとかさ、電車のムードとかさ、そういうムードの映画っていうかね。とらえようがないムードを映像にしようとした映画って感じがしました。
吉本ばななの小説を読んだときに感じる、なにかはっきりとはわからないけど、ムードがあるみたいな、とらえどころがないけど何かがあるみたいな感じ。それを映画にしたらこうなるかもって思わせる。
小説や漫画を原作にした映画が、原作をなぞるだけになってるいるとあんまりおもしろい映画にならない。原作を土台にして飛躍してみせる映画はおもしろい映画になる。そういう気がします。この映画は飛躍して別物になっているのに、小説の醸し出すムードみたいなものはちゃんとある。
だからけっこう出来はいいのかもしれないですね。うまく小説の空気感を映像にできているから。まあ、奇妙ですけどね。スイカ洗いながら爆笑とか。橋爪功の住んでる家のモダンなことといったらないね。お洒落すぎじゃないか、あの家。めちゃくちゃ広いしモデルルームみたいで生活感ない。
そういう人工的な空間で、奇妙な演技を繰り広げる俳優たち。なんだろ、癖になるこの感じ。ミキサーで果物をミックスジュースにするシーンとかいいんだよ。いい感じのピアノのメロディかかって、照明も薄暗く幻想的なムードからのおばあちゃんの回想シーンへという流れとかさ。
橋爪功の恋人の医者の人が、森本レオっぽくもあり、ダチョウ倶楽部のリーダーぽくもあるのもおもしろい。今となってはなんか変な味わいのある映画ですね。
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