それを書き写して自分が書いた小説として出版社に送ると絶賛されて出版されて大ヒットして一躍ヒット作家になった主人公。偽りの化けの皮がハゲるのを恐れてごまかしの日々をおくるのだが……。
主人公を演じるのはピエール・ニネ。なんかこの人見てると、丸山明宏時代の美輪明宏さんを思い起こしてしまう。なんか美輪さんが演じてるみたいに思って変な感じ。
作家になりたいなりたいって頑張って書くんだけど、原稿を出版社におくっても、お祈り手紙が戻ってくるだけでとても作家としてデビューできるような才能はないっぽい若者です。
孤独死老人の日記を小説として書けばうけるだろうということがわかるぐらいだから、おもしろい小説がどんなものかはわかってるんだろう。
どんな小説が良いのかはわかってるけど、自分では書けないっていうのが一番苦しいですね。
まあそれで小説は大ヒット。若いのにこんなリアルな描写ができるのかと称賛される。新進気鋭の作家としてデビューします。目をつけていた女性にも、自信満々に接することができて、恋人同士になれる。
作家としての名声と富豪の娘、夢のような人生を手に入れたはずの主人公だが、どんどんおいつめられていく。次回作を書く書く詐欺をして出版社から前借りしまくっててお金がカツカツです。早く次回作の原稿をおくってこいって言われても書けない。
なんにも思い浮かばない。空白のままのPC画面を見つめて途方にくれるピエール・ニネだが、恋人には順調だよって取り繕う。
恋人の親の別荘で優雅にバカンスして、表面上はゆったりしてるんだけど、ピエール・ニネはそれどころではなく、心の中は焦ってあたふたしてる。
このごまかすための努力がすごいんです。すげえなあ。こんな頑張るのかって感心する。日記を自分の書いた小説だって出版社におくったときも、内容について突っ込まれても答えられるように、資料集めして暗記したりします。
一夜漬けの受験生か?あと、偉大な作家風の言動を身につけるために、いろんな作家のインタビュー動画を見て自分でも演じてみたりとか。ごまかす努力がすごい。
出版社からの催促をかわすために思いついたのが狂言強盗。自動車強盗に襲われて怪我して、PCも壊されたから原稿は遅れるとか狂言強盗をでっち上げる。
そこまでやる?自分だったらもうめんどくさくてそこまでできないよ。
ふう、これで時間稼ぎできたと一息ついたら、今度は日記の老人の知り合いらしい男がサイン会にやってきて、お前のやったことわかってるぞと強請ってくる。金払えって脅してくるんだけど、ご存知のとおり主人公の家計は火の車でお金はない。
お金はない、原稿は書けない、脅迫者が現れる、こりゃもうダメかって感じなんすけど、ピエール・ニネは頑張ります。
恋人の父親が富豪で、古式銃のコレクションしてるから、それをお金のかわりにやるよってことで主人公が銃を盗む。しかし、恋人の幼馴染が不審に思って主人公の部屋で銃を発見。お前が犯人かってピエール・ニネと揉み合いになって、ピエール・ニネは彼を殺してしまう。
うわー、やべえ~、こりゃどうしようもない、もうダメかってなるんだけど、死体をくるんで夜中に運んでボートで海に沈めて隠蔽します。そこに沿岸警備隊かなんかが深夜パトロールしてたのか、発見されて、やべえってなって必死に泳いで逃げ帰るピエール・ニネ。
ちゃんと泳いで逃げきる。いや無理だろって思ったけど、すげえ頑張ったから逃げ切ったのか。自分だったらあきらめてる。
どこまでがんばるのよって、呆れるやら感心するやら。恋人が妊娠、ピエール・ニネの行動が変なことで、よそに女がいるのか疑われるけど、ピエール・ニネは君のことほんとに愛してるんだ、失いたくないと本心から言う。
恋人とも仲直り、本心を告げたから心が軽くなったのか、ピエール・ニネは偽りの人生についての小説を一気に書き上げる。そして原稿は完成。
これで一息つけると思いきや、死体につけた重りが軽すぎて浮かんできちゃって発見されて警察が捜査にやってくる。死体の爪に犯人の皮膚らしき組織が残っていたのでDNA鑑定で照合していく予定ですと。
やべえ、今度こそ終わりだって思うんだけど、まだ頑張るのよ。
脅迫者の男を誘い出して車に乗せる。助手席のエアバッグを作動しないようにしてシートベルトもしめれないようにしておいて、山中で猛スピードで激突事故をおこします。
ピエール・ニネはエアバッグで助かる。脅迫者は死亡。死んだ脅迫者の死体を運転席に移動させて、自分の腕時計をはめさせてガソリンまいて火を付ける。
自動車事故でピエール・ニネは死んだということになります。身元不明人として生きていくことにして、恋人のもとを去ったピエール・ニネ。
数年後、日雇労働から帰る途中の本屋のウィンドウに自分の新作が並んでいるのを発見する。あの原稿が出版されていたんだって、お店に入ろうとしたら、そこには恋人がいて、出版イベントの朗読会が開催されているらしかった。
そこには赤ん坊の自分の子供もいた。自分の力で書き上げた原稿が出版されて、恋人もいて、赤ん坊もいて、ピエール・ニネが夢見た成功のすべてがそこにある。
しかし、ピエール・ニネはそこから去っていく。名乗り出ることはできないし、その成功を手にすることは一生ないのだった。おしまい。
あれだけ頑張ったのに、何一つ手に入らないという結末。まあ、頑張ったといっても、頑張る方向がごまかすためだからなあ。
努力の方向を間違えたら、成功を手にすることができないという教訓だね。