信じられない凡ミスで仕事を失敗したのだが、いや、おれは一流、こんなミスするわけがないって思いたいがために、失策をないことにしてプライドを取り戻すためにやらなくていいことやって頑張るのを見せる映画。
いや、おれは失敗してない、おれは一流、おれはすごいっていうプライドを守るために、行動してるのを見せるだけ。こいつほんとくだらないなあって呆れてしまう。
結局、三流の殺し屋が一流と思い込んでるところがおかしくておもしろいっていうことなのかな?マイケル・ファスベンダーの能書きがすごい。
ビジネス自己啓発本を愛読してそうな、格言みたいなことを繰り返し心の中で反芻する。心の声がすごい。めちゃくちゃ頭の中で喋ってる。うるさいぐらいです。
これは原作がコミックだからかも。マンガって主人公の思ってること全部独り言で言うじゃないですか。あれをそのまま実写映画でやってる感じ。
それで狙撃の仕事なんすけど、ターゲットがなかなか現れないからじっと辛抱して待ってるわけ。プロだからおれは平静にいくらでも待つ、それが仕事だからなみたいな。
やっとターゲットが現れて狙撃タイムになるわけですけども、撃ったら普通に失敗します。ターゲットじゃなくて女に命中。
なにかイレギュラーなことがおきてとか、急に邪魔が入ってとかじゃなくて、ただたんに失敗する。え?普通に失敗したけど……ってちょっとびっくりします。
マイケル・ファスベンダーもびっくりして唖然としてて、ちょっと放心状態になってるのが笑える。でもおれは一流の殺し屋、失敗はしない、こんな凡ミスありえないと思い込んでるので、冷静を装って現場から撤収します。
逃走経路はあらかじめ計画用意してるのでスムーズに逃げる。このへんの準備の良さは一流です。狙撃の腕は三流だけどね。
全部がこの調子だから、失笑がわいてくるんすよ、見てるうちに。こいつ能書きだけはすごいけど、やってること全部おかしいやんみたいな。
音楽はいいぞ、暇つぶしになるし集中できるとか、ハンバーガーのパンをのけて肉だけ食うとかさ。かっこつけてるけど、失敗してますけど……みたいな。ハンバーガー普通に全部食えばいいだろ?アホか?みたいな。
パン食わねえから腹にちから入らなくて狙撃に失敗するんだろ。
そんでカリブ海かなんかの自宅に帰ってみると、妻が何者かに襲撃されてボコボコにされていた。なんてことしやがる、許さねえって自分を狙ったやつを探し出して報復するために動き出すってわけ。
殺し屋を運んだタクシーの運転手、仕事を仲介した弁護士、妻をボコボコにした殺し屋などを辿っていって殺していく。
やってることが全部言ってることと逆。冷静で利益を考えて誰も信用せず情もかけず即興はやめるとか言ってるのに、やってることは即興で感情的な復讐。
こんなことやってマイケル・ファスベンダーはなんも得はない。マイケル・ファスベンダーってフリーランスの殺し屋ですよね。どっか組織に所属してる専属とかじゃないっすよね?
仕事は失敗するわ、無関係なやつも殺すわ、あちこち派手に動き回って同業者殺すし、こんなやつのとこに仕事依頼はもうこないだろ。
マイケル・ファスベンダーは引退したってことなのかな。
最後、依頼主のとこに乗り込んで、いつでもお前を殺すことができるぞと脅して殺さずに帰宅。恋人とのんびりニッコリ太陽の光をあびて自宅でくつろぐマイケル・ファスベンダーってことでおしまい。
依頼主はファスベンダーのことなんかなんも知らない。ただ金払って暗殺を依頼して、それが失敗したから、また金払って後始末を依頼しただけだった。
ファスベンダーもここで冷静になったのかな?こいつ殺してもなんも意味ないなって。
これで狙撃の失敗を忘れることができたってわけ?彼は狙撃に失敗したことですべてを失った。仕事はもうできないし、あちこちやらなくていい殺しをしたことで痕跡をいっぱい残したから警察の捜査はあるし。
同業者にあれこれ好き勝手したから、業界からほされるんじゃないの。失敗したけどリカバーできた~ってできてないがな。全部失ってる。
莫大な経費とリスクをおかして、得たものは感情的にスッキリしたという虚しいもの。
今までたまたま運が良くて失敗しなかっただけの三流の仕事人が失敗をどうにか忘れるために醜く暴れまわったっていう虚しい話にしか思えない。
プライドを守るためだけに生きてるしょうもないおっさんの話に見えてくる。
コメディだけど、笑える感じには描いてないからきつかったなあ。デヴィッド・フィンチャーにはコメディセンスがないからしょうがないけど。
でもおもしろいのかおもしろくないかとでいうとおもしろかった。
いろんな見方できる。
普通にプロフェッショナルな殺し屋のお仕事映画として楽しんでもいいし、フリとオチがしっかりある殺し屋コントとして楽しんでもいい。
映像と音の緊迫感を楽しむのもいい。