大ベテラン俳優たちの顔の濃さ。存在感。いやー、この味は若い俳優では出ないですね。ちょっとした役で短い時間しか出てなくても印象に残る顔してる。今60歳とか70歳とか、それぐらいの昔の俳優はどうして、こう顔が味わい深い人が多いのか。
キャリアをつむうちに、顔ができてくるのかなあ。この映画、若い人出てこない。佐藤浩市、松たか子、瑛太出てるけど、彼らも若者ではないし。冨浦智嗣が唯一の若者。この映画、俳優の平均年齢めちゃ高い。
お話は大鹿村で起こる小さな騒動です。長野県にある村。この村では300年続く大鹿歌舞伎っていう村人が歌舞伎を演じる村の行事がある。
村でジビエ料理店をやってる原田芳雄も出るんだけど、数日後に公演というときに、幼馴染の岸部一徳と駆け落ちして村を出ていった妻、大楠道代が帰ってくる。
岸部一徳が言うには、大楠道代はボケてしまってオレのことを原田芳雄と言うし、もう手に負えないから返すって言うわけ。いきなり妻が戻ってきて、どうしたらいいのかわからない原田芳雄だが……っていう感じ。
大楠道代は普通にしてると思ったら、いきなり冷蔵庫あけてなんでもかんでも食べようとしたり、雑貨屋でお金を払わずに瓶詰めを持っていったり。
そうかと思ったら、また普通に戻ったりと、こりゃほんとに手に負えないわって感じでした。いきなり岸部一徳と大楠道代が帰ってきて、記憶障害でおかしくなってるから返すって言われて、原田芳雄は怒ったり切れたり暴れたりするのかなと
思ってみてたら、そんなに怒らない原田芳雄。なんか仲良し3人組みたいな感じだったらしいですね。昔のことは台詞の端々でちょこっとわかるぐらいにしか描かれないので、詳しい彼らの関係はわからない。
大楠道代は、ひどいことしたって駆け落ちして原田芳雄を捨てたことを苦に思って自殺でもしそうな勢い。
歌舞伎上演が迫る中、佐藤浩市が車の事故で出演できなくなる。そういえば昔は、その役を大楠道代がやってたね、もしかしたら、その役を演じることで昔のことも思い出して、記憶がちゃんと戻るかもっていうことで大楠道代が歌舞伎に出ることに。
後半はその大鹿歌舞伎のシーンがけっこう長く描かれる。なかなかおもしろかった。小さな田舎の村の歌舞伎だけど、衣装も舞台もけっこうしっかりしてて、楽しく見れた。
それで歌舞伎で昔のように共演したことで、原田芳雄と大楠道代の気持ちがなんとなく通じてほっこりしておしまい。大楠道代は記憶がちゃんと戻ったのかと思いきや、ちょっとおかしいままで、あれれ?みたいな。
いやー、ドラマはあんまりうまくは描けてないような気がしたけど、役者の味がすごいから、なんとなく見れてしまったって感じです。
なんとなーく、なんとなく、日々は過ぎていくよみたいなゆるいムード。それは別に嫌いじゃなかったな。
大鹿村にリニア新幹線の駅ができるとかできないとかいう話も出てきたけど、それで揉め事が描かれるわけでもなく。
冨浦智嗣が原田芳雄の店のアルバイトで来るんだけど、彼は心は女なのに体は男で悩んでいて、自分を見つめ直すために山奥で働くことにした人。
郵便配達員の瑛太に一目惚れして、どうなるかみたいな展開もあったけど、別にどうこうなるわけでもなく。
原田芳雄と大楠道代もどう決着したのかぼんやりしてたし。
300年以上続く大鹿歌舞伎のように、人生は日々いろいろあって、決着がつかないまま、時間が積み重なって流れていくものだみたいなことかな。
大鹿村って自然がいっぱいでけっこういい感じの村みたいだし、春と秋に大鹿歌舞伎やってるのを観光するのも楽しいかも。