なんかありそうっていう空気がずっと続くからつまらなくは感じない。
舞台は豪華客船。純文学の作家メリル・ストリープがイギリスでの授賞式に参加するために船旅をする。飛行機に乗りたくないといったらエージェントが豪華客船にコネがあるから船で行きましょうってなる。
じゃあ、同乗者を何人かいいかしらって、大学生時代の女友達二人と甥を誘う。この3人は彼女の知り合いだが、今は特別仲良しというわけじゃない。何十年も疎遠でなぜこの3人を旅に誘ったのか?
船旅中に続編の執筆をする彼女をスパイするためにエージェントがこっそり乗り込み甥と仲良くなって情報を得ようとする。
女ともだちの一人はメリル・ストリープのお茶の誘いなどをつっけんどんに断ったりして、なにか過去に遺恨がありそう。
メリル・ストリープの部屋から謎の男が毎朝出てくるとか。
そういうのが豪華客船での船旅の中で描写されていく。なんてことない普通に見える映像しか出てこないけど、なんかあるんだろうなっていう雰囲気が漂っているので、退屈はまったくしない。
こういう思わせぶりっていうか、なにかあるんだろな空気を醸し出せるところがうまいですね。下手にやると見てられないっすよ。
で、なんかあるのかというと、とくにそれほどのことはないって感じです。いやー、これもっと大げさなドラマにもできるような話だったけど、ドラマチックには描かれない。
メリル・ストリープにそっけない態度をとってた友達は、メリル・ストリープが自分のことをモデルにして小説を書いたと思ってて、それをメリル・ストリープがなんも言わないのを根に持ってる。
ほんとに彼女をモデルにして書いたのかどうかはよくわかりません。
もう一人の友達は、あの小説読んでもあなたのことだと思わなかった、勘違いじゃないのって言うけど、わたし彼女にあのとき打ち明け話をしていろいろと喋ったから間違いないのよってゆずらない。
彼女に謝ってほしい。そしてお金もほしいみたいな。あの小説のせいで夫は去ってしまって、今は独身で下着売り場で働いてて、年下の上司にガミガミ言われてる。
こんな人生になったのはメリル・ストリープがわたしのことを小説に書いたせいだって思ってるわけ。メリル・ストリープがこのことの決着をつけたくて船旅に誘ったのかどうかもよくわからない。
この部分の和解ドラマ、ケンカドラマが見られるのかと思ったら、そういうこともなくあっさりとしか描かれない。というかメリル・ストリープがあっさりと死んでしまいます。
血栓ができる病気かなんかでいつ死んでもおかしくない状態だったんだって。メリル・ストリープの部屋からでてくる謎の男は医者で、帯同して藥を注射してた。
最後になるかもしれない旅にわざわざこの3人を選んで呼び寄せた。なにか意味があるんだろう。だけど、なんかよくわからない感じでした。
3人とメリル・ストリープがあんまり会話しないし、この本読んどいてってメリル・ストリープが好きなのかなんなのかよくわからんやつの本をみんなにわたすけど、純文学だからおもしろくなくてみんな読まないし。
その作家のお墓がイギリスにあってそこを授賞式の前に行きましょうっていう予定で、そこ行く前に死んじゃったから、甥が墓参りしよう、そうしないとこの旅は終わらないような気がするって3人でお墓に行くんだけど、
とくにどうということもなく終了。そりゃ興味ない作家のお墓なんか行ってもなあって。
自分をモデルにしたと思ってる友達は、メリル・ストリープの創作ノートを盗んでこれで続編だしましょうってエージェントにもちかけるけど、未完成で出版できるようなレベルじゃないと断られる。
もう一人の友達は、船内で知り合ったベストセラーエンタメ作家と意気投合して、毒殺にかんするアドバイザーとして新作を共同執筆することになる。
甥はもどってきたメリル・ストリープの創作ノートを彼女の家に戻しに行って、デスクに子供だったころの自分の写真が飾ってあるのを見て、彼女との最後の旅におもいをはせるのであった。
メリル・ストリープはいったいなにをしたかったのか。なにかをメッセージとして残したかったのか、なんなのか。
気取ってやがるぜ。かっこつけすぎで、なにがやりたいのかよくわからないぜ状態。
メリル・ストリープも普通に話すればいいようなものなんだけど、率直に心の内を話すのは照れくさいっていうことなのかなあ。
純文学作家なので直接的な表現は苦手ってことなのか。
ベストセラー作家の書くものをただのパズルみたいなものでつまらないと言ってたけど、それがいいんじゃないかっていうね。遠回しな婉曲表現より、簡単な直接の言葉のほうがいい場合が多いんじゃないすかね。