草刈正雄は大学生。早稲田大学ですかね。人形劇サークルに所属してます。なんかさ、70年代の大学生映画には、必ず人形劇サークルが出てくる。必ずじゃないけど、けっこうな確率で主人公が人形劇やってるイメージある。
60年代後半、70年代は学生運動が盛んだったんだっけ?それまでは暴力的な過激な活動が多かったけど、70年代は文化活動での啓蒙活動が学生運動の主流な活動方法だったらしいです。よくしらんけど。
それで人形劇とか演劇とかやる大学生が多かったらしい。違ったかな。よくわからないんすよねえ、学生運動とか当時の時代の感覚が。今60歳とか70歳とかの人が青春時代だったときですかねえ。
高橋惠子はジジイが一人でやってるような小さな出版社勤務です。そんな二人が運命的な出会いをして一緒に暮らすようになる。同棲生活。
それがさあ、どっちの家族もわけありというか、二人に理解がないのでうまくいかないわけ。
草刈正雄の兄貴は官僚。お前もおれと同じ道をいくんだって強制してくる。おれがお前ぐらいの年齢のとき、国家公務員上級にうかって、司法試験にも合格してたぞとかいうエリート兄です。
おれは兄貴とは違うんだって草刈正雄が言っても聞く耳持たない。
人形劇サークルにはお金持ちの令嬢で草刈正雄に猛烈アタックかけてくる女とかいます。でも草刈正雄は権力や成功、お金や地位などにまったく興味がありません。
おれはそういうのとは違うんだ、純粋な愛をさがすんだって感じです。
高橋惠子のほうは母親が置屋で雑用で働いてる。それでたびたびお金をせびりにくるし、あんた芸者になってくれないか、そしたらわたしらくできるんだけどねえって、娘にたかることしか考えてない母親。
そんな二人が出会ってお互い運命を感じて付き合う。草刈正雄は人形劇の台本を担当してて、執筆がうまくいってなかったけど、高橋惠子との出会いでかぐや姫をもとにしたストーリーを考えつきます。
かぐや姫は月の世界には帰らずに男と暮らして子供がたくさんできて幸せになりましたというお話。二人の未来をたくしたような劇ですね。
草刈正雄のほうがかぐや姫みたいなもので、いつかは兄のいるような世界に帰っていくのではと不安な未来を感じる高橋惠子。そんなことないよ、ぼくはずっと君といるよと固く決意する草刈正雄。
同棲生活やるんだけど、周囲の妨害でうまくきません。
高橋惠子が妊娠したのをかぎつけた草刈正雄の兄は、知り合いの闇医者のとこにつれていって、勝手に強制的に堕胎させてしまう。怖すぎる。ホラー映画だよ。
それでも草刈正雄は高橋惠子との同棲をやめない。だったら仕送りはなしだって勘当される。お金に困った草刈正雄は肉体労働で稼ぐのだが、じょじょに疲労困憊、気持ちがすりへって殺伐としてくる。
わたしも水商売で働くわっていう高橋惠子をせめるような態度をとってしまうようになる。もうこりゃダメだって感じっすよ。
勝手にしろ!って人形劇の人形を川に捨てる草刈正雄。あれほど燃えがった愛の炎は風前の灯火です。あれだぜ、知り合って間もないときに草刈正雄がいきなり部屋に来て高橋惠子に襲いかかるとかしてたんだ。
無言で高橋惠子に襲いかかり、服をはぎとっていく草刈正雄。やばすぎる。明日から人形劇の巡業で雪山にいくから、君のことをぼくに刻みつけないとどうにかなりそうだったとかわけのわからん言い訳をします。
その言い訳をうけいれて、傘を差し出す高橋惠子もたいがいおかしなやつだけど。
そして雪山で人形劇やってる草刈正雄のところに、高橋惠子がひとりで追いかけてきて二人は雪のかまくらで合体です。よくわからんけど、二人の結びつきは強く、二人の愛は不滅のように感じられた。
それがすぐに破綻寸前です。生活の苦労に追われると、純粋な愛も色褪せていくってことかなあ。
そこに友人と金持ち令嬢が雪山で遭難したという知らせがくる。急いで雪山を登ってかけつけると、心中した二人の遺体が……。
遺書にあれこれ書いてあって、自分たちが高橋惠子の妊娠のことや家を草刈正雄の兄に教えたことで、赤ん坊が死ぬことになったことを後悔していたようです。
篝火で燃える二人の遺体をみて、草刈正雄は絶叫する。やりなおすんだ!やってみるんだよ!って高橋惠子との愛を潰させないと決意の雄叫びをあげる。
そっから、川を流れていく人形劇の人形の映像が続きます。川の上流は飲めるほど清いきれいな流れだったのに、流されて下流にいくにつれて汚れやゴミ、汚濁にまみれた流れになっていく。別れ別れになってしまって、一体だけが沈みながらどこかへ流れていく。
まるで二人の愛が壊れて、別れをむかえてしまったかのようです。
清い川の流れのなかでしか、純粋な愛は存在できない。汚れてしまった社会のなかでは、彼らの愛は成就しないのだみたいな。
まあ、暗い。救いなし。映像的にはおもしろかったです。昔の町の風景が懐かしくてよかったなあ。川沿いってなんか風情がありますね。