アイドルに熱狂するファンの群衆と、ナチスに心酔して熱狂的に支持した人々を重ねて描いている。そうだよなあ。当時のドイツではヒトラーとかナチスとか軍人とかが、かっこいい存在だったんだろうね。
年端も行かぬ幼い少年少女にとって、かっこいい軍服に身を包んで悪のユダヤを倒すナチスはヒーローに見えただろう。そういうのを思いっきり風刺するコメディトーンで最初始まる。僕も立派なナチになれるかな?って不安になってる少年には、幻影のヒトラーが友達として出てきます。
ことあるごとに彼の頭の中にいるヒトラーがあれこれ話相手になるのが笑える。そんな彼なんすけど、母親はなんとレジスタンス。反ナチスの活動してて、家にユダヤ人の少女を匿っています。
前半は少年のコミカルな様子でナチスをおもしろおかしく茶化してる感じで軽いトーンだったんだけど、だんだん重苦しくなってきます。
ナチスを支持してる人もいれば、そうじゃない人たちもいた。母親のようなレジスタンスもいれば、あのキャンプの教官の大尉だっけ、あの人もドイツ軍人でありながら反ナチスで主人公を助けてくれます。
お気楽ムードで戦争映画でも楽しげだったけど、ゲシュタポの取締により母親は吊るされてしまうような残酷さがあっさりと描かれるのがインパクトありますね。
コメディのトーンだけど、戦争のシリアスさを描いてるっていうところは、ロベルト・ベニーニの「ライフ・イズ・ビューティフル」と似てるのかな。あれもコメディトーンでシリアスをやってましたよね。久しぶりに見返したくなったなあ。
まあ、でもどうだろうか。ちょっと癖が強すぎるような気もしたけどね。主人公が手投げ弾を爆発させても死なずに顔をちょっと手術しただけで済むとかさ。いやー、普通死ぬと思うけど死なないし、顔とかぐちゃぐちゃだっていってたからもっとすごいツギハギの顔になるのかを思いきや、ほとんど縫い跡がわからない浅いキズで済んでるし。
匿ってるユダヤの女の子と、最後ボーイ・ミーツ・ガールが始まっちゃうよみたいな終わり方もあまりにもお気楽すぎるような気もする。戦争が終わるということは、平和が訪れるということは、普通に男の子と女の子が恋できる世界になるということなんだろうけどさ。