小津安二郎の映画でよく見かける話だなみたいな。出演者も佐分利信や京マチ子、若尾文子、野添ひとみ、川口浩、船越英二とかおなじみの顔ぶれだし。オズというより増村保造っぽいのかな?最初のほうの若尾文子の無機質な棒読みセリフなんかいかにも増村保造映画みたいだったし。
最初の電話シーンがすごい。なんだろあの無機質な電話の受け答え。狙ってんなあみたいな。小津安二郎と増村保造みたいなのをやろうと狙ってんなあみたいな。
若尾文子のメガネもいいし、京マチ子のズケズケ図々しい感じもいいし、登場人物たちの見た目の面白さは満点ですね。野添ひとみは虫歯が痛いってんで、ほっぺに包帯巻いて出てきたりしておかしい。若尾文子が日産自動車のカーデザイナーっていうのもおもしろくて笑っちゃう。
話はいまいちなんすけど、見た目がおもしろい。家のセットも、純和風っていうか、昔の日本の長屋って感じでいい感じの情緒があります。家の玄関ドアや台所、勝手口とか、自分が小さいこどもの頃はこういう感じだったなと懐かしく感じる。
最後の締めくくり方は、若尾文子がアメリカに行くっていうことで、父離れ、子離れするっていう終わり方なんだけどなんかすっきりしない。
婚約者との縁談を断って、婚約者は京マチ子と結婚。妹の野添ひとみは川口浩と。川口浩は若尾文子のことが好きなんだけど、野添ひとみの猛プッシュに負ける。
わたしがお嫁に行っちゃうとお父さんひとりでどうするの。佐分利信のほうも口ではお見合いどうだとすすめてくるけど、本心ではお見合いしてほしくなくて、当日に具合が悪いとか言い出してなんだかんだと若尾文子に世話を焼かせようとする。
京マチ子や野添ひとみは、自分の幸せを自分でもぎ取ろうと図々しいぐらいに一直線に突き進む。それにくらべて若尾文子の煮え切らないこと。自分の幸せがなにかはっきりとつかめてない。
結婚して家庭をもつことか。いい男と一緒になることか。父親の世話をやいて暮らすことか。なにが幸せなのかわからなくなってる。カーデザイナーの仕事に打ち込むことが今のところの幸せっていうことになるのかな、あのラストだったら。
京マチ子にずばりと言われる佐分利信。あなたのせいで若尾文子は結婚できないんですよ、だからお父さん結婚するんだっていってみなさいと。若尾文子を自由にしてあげなさいと京マチ子が言う。なんだいい人じゃないかみたいな。
ただの図々しい気性の荒い人かと思ってみてたけど、ちゃんとしてるなあみたいな。まあ、OZUパロディのストーリーはともかく、映像はいいのでけっこう楽しめました。