安藤サクラと窪田正孝が結婚。窪田正孝が林業やってるときに死亡。死んだ夫が戸籍とは別の人だったっていうのがわかって、窪田正孝は誰だったのか、どうして他人の戸籍を使っていたのかを調べる話。調べるのは弁護士の妻夫木聡です。
弁護士費用は誰が出してるのか疑問だけど、安藤サクラが保険金で払ったのかな?
こういうのって昔からさんざんやられてるでしょう。松本清張とか宮部みゆきとか高村薫とかさ、火曜サスペンス劇場とかさ。それを今の時代でやるからには、新しい切り口、今の時代ならでは視点があるんだろうなと期待したんだけど、ないんだよ。
窪田正孝は人殺しの息子。殺人者である父親の影に怯え、自分にはその血が流れていることに悩んで別人の戸籍を得て別人として生きようとした。それだけです。
え?どういうこと?な、なんだこれは……。終わってエンドロールが始まって唖然としてしまった。なんにも新機軸がない。なんにもない薄っぺらい話を格調高そうにやっただけ。
わからない。なぜ今こんなものを作るのか。出来が良いわけでもないんすよ。テレビの火曜サスペンスのほうが、もっと凝った話だったり、仕掛けがあったりする話だったりすると思う。
薄っぺらいなあとしか。妻夫木聡が在日三世なんだけど、弁護士で社会的地位もあり、家は裕福で奥さんの真木よう子と小さな息子もいて家庭も手に入れて、人並み以上のものをもってるんだけど満たされてない男なんすよ。
帰化してるけど在日だということでいまだに居心地の悪い思いをすることもある。奥さんは浮気してる。窪田正孝の人生を追うことで、なんだか俺も他人になって今とは別の人生を生きてみたいよってなる。
窪田正孝の気持ちが妻夫木聡にはよくわかる。
それがラストシーンになってたのが新機軸といえば新機軸なのかな?ミイラ取りがミイラになるということが新しいところなのかあ。だったらさ、こっから妻夫木聡がほんとに誰かになりすまして人生をやり直すというところが本番じゃないのか。
それを描けば、今、こういうのをやる意味はあった。この映画で描かれたことは起承転結の起でしかない。
この映画で面白かったのは、妻夫木聡と真木よう子が夫婦役だったところですね。真木よう子がでてきて、おお、これは「砦なき者」の組み合わせじゃないかって懐かしくなった。
20年ぐらい前ですかね。砦なき者で妻夫木聡と真木よう子が共演してた。あのころ、ふたりとも若者だったなあ。それが20年たってまた共演してるのを見れるとは。二人とも俳優として売れ続けてんだなあって、なんかしみじみした。
あと柄本明ね。最高。すげえよ。柄本明のパートだけおもしろい。子役たちのクソ演技にうんざり気味だったのが柄本明に救われましたね。出てくる子供が全員、子役演技しててほんとげんなりしたから、柄本明の怪演は口直しに最高でした。
妻夫木聡をおちょくりまくる柄本明。見ててこいつひでえ~、腹立つわ~みたいなイラッとする柄本明の演技がこってりで最高だった。いきなりあんた在日でしょって最初にかます。在日じゃないような顔してるのが、在日っぽさ丸出しっちゅうことですわって、妻夫木聡の気にしているところをズケズケ言いまくる。
まるでこの映画自体を茶化してるようにも見えた。
なに上品ぶってんだ、古臭い話をなにも新味なくやってるだけだろ、バカじゃないのかって柄本明が言ってくれてるように感じたなあ。
それからなんだろ、仏壇の遺影を見て別人だと兄が言うシーンのコントみたいなやりとりがおかしくてたまらない。
写真はないんですか?いや、これです、いや、違うけど、え?いやこれですよ、いや、別人、?いやいや、そんな変わりましたか、うん?そうじゃなくて違う人ですみたいな、やりとりがすれ違いコントにしか見えなくて笑っちゃった。
うわ、志村けんのコント始まった~みたいな。
ちょいちょいコントみたいなところあるんだよなあ。窪田正孝が鏡にうつる顔に父親の面影を見出して苦悩するとか、ランニング中にたおれこんで泣くとか、なんだこれみたいな。古臭い見せ方というかなんというか。
アナクロニズムなんだ、お話も見せ方も。