保護者っていうか、庇護してくれる存在がいるかいないかで人生が変わるって思ったなあ。やっぱり子供にとって、親の存在、大人の存在ってすごく重要なんだなと。
50年たったビョルンは白髪のヒゲモジャ長髪になってて、ファンタジー映画に出てくるエルフの魔法使いみたいなルックスになってます。ガスコンロの火をつけたまま出かけたりして危ないから部屋を出ていってくれって大家に言われて困ってる。
なんだよそれって感じですけども、今の彼女に説教されながら、汚いベッドを掃除したりあれこれ片付けたりして、きれいな服着て髪の毛もちゃんと束ねて、大家さんの訪問面接にのぞむ。ガスつけっぱはもうしません、これから気をつけますみたいな
殊勝な態度で真面目さをアピールしてなんとか退去を免れる。そんな今のビョルンの姿はかつてベニスに死すでフィーバーを巻き起こした美少年からは程遠い。
ルキノ・ビスコンティがタジオ役を探してあちこちでオーディションをしてて、そのときの映像が流れて、ビョルン・アンドレセンの面接の映像も出てくる。
まあ、美少年といえばそうなんだけど、あどけない普通の子供って感じです。上半身ハダカになってくれって言われて戸惑う様子とか、ほんと普通の子供って感じ。
それでベニスに死すの撮影になって、その撮影風景の映像もある。あの映画ってさ、どうだったか覚えてないけど、ビョルン・アンドレセンは演技してるというより、そこに存在してることが意味あるみたいな感じでしたっけ。
ルキノ・ビスコンティも演技させようとは思ってなかったみたいで、ビョルン・アンドレセンの見た目が必要で抜擢したみたいな感じでしたかな。
そのときビョルン・アンドレセンの保護者はおばあちゃんで、祖母は彼を商品として売り込むことに夢中で頼れる存在ではなかったみたいなことが語られる。
ルキノ・ビスコンティはゲイで、撮影チームもゲイたちだったらしいんすけど、撮影中はビスコンティの庇護があって嫌な思いはしなかったらしいです。
完成してカンヌやなんやらでお披露目されるときには、ルキノ・ビスコンティはもうビョルン・アンドレセンに興味を失ってたみたいな感じで描かれる。もう彼は美少年ではない、背が高すぎるし、髪も長過ぎるみたいなことを冗談交じりのように記者にこたえるルキノ・ビスコンティ。
まあ、あの瞬間の少年でもない大人でもない独特な美をもったビョルン・アンドレセンの姿が映画に必要で、それが済んだらもう用済みってことか。芸術家はそういうもんかなあ。
自分の作品のことだけ考えて、そこにかかわる人間を人間扱いはしないみたいな非情さ。
映画のあと、あの美青年をつれてるというステータスに酔う大人たちにアクセサリー感覚で連れ回されたりもしたみたいです。そのへんのことは詳しくは描かれないので、よくわからないけど。
おばあちゃんがすすめるので、日本での仕事をする。日本ではフィーバーがおきている。まあ、日本は外タレ好きですよね。外国人の美男美女、美少年美少女が大好きなのが日本。
当時、日本にやってきてたんだなあ。日本でチョコレートのCM撮影したり、日本語の歌詞の歌をレコーディングしたりしてたみたいで、当時の映像も見れます。美少年がやってきたってフィーバーしてる様子が映像に残ってる。
現在のビョルン・アンドレセンが当時泊まった帝国ホテルに泊まって当時を懐かしむ。当時の撮影やレコーディングにたちあった日本のプロデューサーと対談したりする。
ビョルン・アンドレセンは普通に冷静な感じなんだけど、プロデューサーらは当時の熱気が再会でよみがえるのか、当時の彼がいかに美しかったかと興奮気味なのがおもしろい。本人と周囲の温度差がくっきりしてて。
ベルサイユのばらの漫画家の池田理代子が、オスカルのモデルはビョルン・アンドレセンだと当時のビョルン・アンドレセンの登場の衝撃と少女漫画に与えた影響の大きさを語るんだけど、彼女の感動してる様子が当時のインパクトの大きさを物語る。
当時、まだ子供のビョルン・アンドレセンは薬を飲まされて過密スケジュールで仕事してたとか語られる。だからなんか実感として自分が熱狂をおこしているという感覚はなかったみたいですね。
後半は彼の生い立ちをさぐっていく。母親はボヘミアン的な人でアートな人だったらしい。モデルとかもやってた。父親が誰なのかはわからない。母親の友達だった人に聞いてたけど、わからないってそっけなく言われてた。
妹がいるんだけど、彼女とは父親が違うらしい。母親はビョルン・アンドレセンがまだ幼いときに、失踪して森の中で亡くなってるのが発見される。
たぶん自殺なんだろうけど、はっきりとしたことはわかりません。父親はわからない、母親は死んでしまうという状況で育った。
映画にでたあと、俳優としてやってくために演劇学校行ったり、結婚して子供ができたりしたみたいなんだけど、酒におぼれてうまくいかなかったらしいです。
二人目の子供が赤ん坊のときに突然死で亡くす。泥酔してて赤ん坊の異変に気がつけず、死なせてしまう。まあ、なんかそんな感じで、仕事も家庭もいまいちうまくいかない。
父親になることに不安を感じていて、娘との関係も娘が大人になった現在はうまくいってるけど、昔はうまくいっていなかった。
アリ・アスターの「ミッドサマー」に出演してるときの映像も流れました。なんか話題になってましたね、あのベニスに死すの美少年が出てるって。
あとはなんだろ、今の彼女と電話でケンカになったりしてるシーンがおもしろかったかな。あんたはブタだ!とかめっちゃ彼女が切れててそれを大人しく聞いてるビョルン・アンドレセン。
日本でカラオケで当時レコーディングした日本語の歌を歌うビョルン・アンドレセン。カラオケ映像のなかの子供のビョルンと、今現在のビョルンがオーバーラップ。
うーん、まあ、どうなんだろう。「ベニスに死す」に出演して美しい少年と言われたことが、その後に人生に暗い影をおとすことになったといえば、そうなのかなって納得しちゃうけど、映画に出たからこうなったのか、
でなければ幸福な人生だったのか、それはわからないことなので、なんとも言えないですね。
ただやっぱり、子供にはちゃんとした頼れる存在、庇護者、保護者が必要なんだということは強く思ったなあ。