細田守監督脚本原作アニメーション。
そばかすの高校生がネット空間で歌姫になって、そこで出会った竜の危機を感じて助けにいく話。かなり無茶苦茶というか、無理やりというか。とくに後半、龍の正体がわかって、親から虐待されてるみたいだから助けに行く展開。
あれどうなんだろう。ただの恋愛ドラマでよかったんじゃないかと思ってしまった。虐待要素なしでもぜんぜんよかったのにって思ったけど。
恋愛だけじゃダメですか?みたいな。
よく、文句でなんでもかんでも恋愛要素むりやりいれて、それがよくないみたいなやつありますけど、それと同じでなんでもかんでも重たい設定いれればいいってもんじゃない。
軽い恋愛ドラマでいいじゃないすか。美女と野獣でいいじゃないすか。なんで虐待の設定をいれたんだろう。いれるんだったら、それをメインにちゃんとやればいいんだけど、そうじゃないんすよ。
盛り上がりのための設定。
主人公が助けに行くけど、それで解決する話じゃないし、虐待父親と対決して、毅然とした態度で睨みつけたら、相手が気迫で負けてヘナヘナってなって決着するとか、いや、それ現実世界のできごとですって見せられても、違和感すごいよ。
虐待をとめにいくっていうのなら、竜がボコボコに殴られて命の危険があるぐらいのひどい状況だぐらいの見せ方しないとダメだと思うけど、そこまではやらない。
ものを壊すとか口で罵るとかどまり。竜にアザがあるっていうのも、熱湯でもかけられてんのかと思ったらそんなことないみたいだし。
このアニメでは仮想空間の世界と現実世界が出てくるんだけど、仮想空間のほうが現実味があって、現実のほうが夢空間みたいで現実味がないです。
もしかしてあの仮想空間のほうが現実で、実は現実世界だと見せてるほうが仮想空間なのではないかとか思った。
50億人が参加するネット世界って言ってたけどほんとかな?ユーザー数水増ししてるんじゃないか。ほんとは50人ぐらいしかいないんじゃないのか。
NPCのように決まったセリフを無感情に繰り返す主人公の父親。生きてる人間とは思えない。NPCじゃないかあれ。
おれイケメンですからっていうイケメンムーブをきめる主人公の幼馴染の男の子。みんなが見てるまえで、手を掴んで顔良く見せてとか言うんすよ。とんだイケメンキャラだ。
おれはおまえのこと見守ってるぜ、周囲の目なんか気にしてないぜって。なんだこいつ?
竜に信用してもらうには、おまえが実際の姿をさらして歌うしかないと言い切るイケメン。え?そうか?って疑問しかわかない。そんな危ないこと無責任に言い切るなよって。
こいつもNPCかもしれない。ニンゲンノココロガカンジラレナイ。
名探偵コナン風場所特定からの、なぜか主人公ひとりで上京するという謎展開。一人で行かせるのも変だし、行ったからといってどうするのかもよくわからないし。
現実世界のはずなのに現実味が感じられない。
仮想空間のほうが、みんな本音で悪意をぶちまけてるし、正義をふりかざして権力欲によってるやつとかもいて正直で現実感がある。狭い村社会の中でのドロドロがある。
主人公の歌に純粋にみんな感動してるのとかも、歌そのものの良さで心が動かされてるって感じで現実っぽい。いい歌だなあ、事情は知らんけどっていうのはリアリティある。
それに比べて主人公の現実が現実味ないなあ。きれいな世界で理想の仮想世界みたいだ。
なんか違和感があるというかなんというか。でも、結局アニメだからなですべてはOKになります。うーん、これでいいってなってるんだから、いいんだろうねみたいな。
最後、みんなで空見上げていい感じになってるから、いい感じってことでいいんだろうねみたいな。
仮想空間世界の設定も、どういうことなんだろっていうのがいろいろあるけどね。生体情報をスキャンして潜在能力がどうのこうのとか言ってたけど、主人公は普通の人間のアバターになってて、他のモブはクリーチャーみたいなのがいっぱいいる。
主人公がかっこわるい見た目のアバターだったら話にならないからっていうご都合主義まるだしだけど、アニメだからまあいいかみたいな。
主人公のアバターがミジンコとかダンゴムシとかみたいな姿だったらかっこつかないもんね。
主人公の母親が見ず知らずの子供を助けるために行動して死んだのを、主人公はなぜ自分をおいて知らない人間のために命を捨てたのかわからずモヤモヤしてる。
父親とも変な距離感。歌が好きなのに人前では歌えない。
それが今回の竜を助けるために行動したことで、困ってる人がいるのを見て、知らないフリでやりすごすことは自分にもできなかったということで、母親の気持ちが理解できて、母親の喪失を受け入れられて一歩先にすすめた。
そういう話なんだろう。うまく描けているのかというと、そうは思えないんだけど、まあ、この映画のなかではそいうことになってるみたいだから、それでいいんだろうって感じ。
やっぱアニメーションは動きがあって、それが楽しければOKだね。お話がどうこうっていうのは別にあまり重要じゃない。
お話のあれがおかしい、これがおかしい、なんでこうなるの、なんなのこれっていう矛盾点や意味不明な部分は、作品にとって瑕疵にはならない。気にはなるけどね。
動いてる絵がおもしろいかどうか。映像がおもしろいかどうか。この竜とそばかすの姫はその点はよかったので、楽しめました。