見始めてさ、あれ?これマーヴェリックじゃなくて、昔の古いほうのトップガンを再生したのかなと思ったぐらい懐かしの「トップガン」の雰囲気で始まった。
そうだ、これこれ、こうでしたねって感じのミュージックに構図。ノーヘルバイクにレイバン。これぞトップガン的なシーンで始まって、気分はすでにトップガン世界に転生状態。
やっぱこれなんだよなあ。映画の世界に観客が没入すると、その映画は観客にとって映画をこえてリアルになる。映画の中の世界に観客が入った時点で作り手の勝ちだ。あとは何やっても感動するんだ。
映画の出来としてはそんなでもないんすよ。丁寧に人間関係を描くわけでもなく、奇跡がおきすぎでご都合主義といわれても仕方ない展開。
でもそれでいいって思っちゃう。見てるこっちは、もう映画の中に入っちゃってるから。映画の中の世界の住人になっちゃってるから、映画の中でおきる奇跡が、自分と地続きにおきたことのように思える。
他人事じゃなく、自分事になるから、感動してしまう。こんなありえないフィクションを自分事のように感じてしまう。
トム・クルーズ主演の映画なんだから、死ぬわけないし、バッドエンディングにはなりえないのはわかってる。でも死ぬかもしれない、死んだ~、ダメだ~ってハラハラしちゃう。
トムがマッハ10をこえて、ヒャッホーーってなったら、こっちもひゃっほーってなるし、不可能なミッションを成功させてヒャッホーってなると、こっちもヒャッホーってなる。
もうダメだってなったときに、味方があらわれて、助かる。いや、タイミング良すぎだろとか思うけど、助かってよかった~って本気で思っちゃう。
トップガン世界に没入できたのは、やっぱり世代的なものですかね?自分が今、年寄りになってて、作品も昔の映画だし、出演者も歳とってるし、年月の積み重ねが、説明されなくても、一言のセリフや、トムの表情や、短い映像にすべてのっかる。
その時間の重みを感じ取って見てるから良いと思ったのかもしれない。
いやー、これは若い人が見たら、どうなんだろ。トップガンも知らないし、ヴァル・キルマーも知らないという若者がマーヴェリックを見たら、そうでもないんじゃないかと思うんだけど、どうなんだろ。
ヴァル・キルマーもああいう形で出てくるとはなあ。トップガンではライバル的な存在のアイスマンでしたっけ。それが出世してお偉いさんになってて、長年マーヴェリックをサポートしつつ友人関係を続けてて、今は病気でもう長くないっていう設定。
こんなのずるいよ~。いくつのっかってるのか。前作の因縁、今作までの間の時間の経過、ヴァル・キルマーの俳優としての人生、いろんなボーナスが加点されすぎてる。
多くを語らずとも感じてしまう。
そうなんだよなあ。この映画は、トムも劇中で言ってましたけど、考えるな、感じろっていうことなんですよねえ。ブルース・リーか?って笑ったけど、この映画自体もそういう作りになってる。
考えさせるのではなく、感じさせようという作り。
過去にいろいろあったけど、今どうなのかが大事なんだ。この映画では、過去の因縁を丁寧にやらずに、現在のふるまいでそれを感じさせるという作り方。
だからいいのかも。
少年ジャンプのマンガ的というかなあ。だいたい少年マンガってそうじゃないすか?過去にいろいろあった因縁あるやつらが集まって、今の戦いのなかでわかりあう。言葉で語り合ってわかりあうわけではなく、今の戦いをともに勝ち残ることでわかりあう。
トップガンマーヴェリックもそうで、マンガ的なわかりやすさがある。
2代目アイスマンみたいなやつ、ハングマンでしたっけ?あいつが控えになって、なんだよ、噛ませ犬で終わりかって思ったら、最後、一番おいしいとこさらっていく。ちゃんと見せ場があって、盛り上がる。
死んだ相棒の息子をなんでメンバーに選んだのか、よくわからなかったけど、トムがかばって撃墜されて息子が助けにきて撃墜されて、
二人で敵の基地にあるオンボロ骨董品戦闘機にのって最新鋭の敵戦闘機とバトルして帰還しようとするっていう熱い展開になるから、もうどうでもよく思えてくる。
そもそもの作戦がむちゃくちゃじゃない?あんな曲芸飛行してタイムリミットガチガチでやらないと成功しない作戦をわざわざやるのかっていう疑問がわくけど、見てるときはもうどうでも良くなってます。
今、現在、ここ、の展開が熱いから細かいことは、まあいいかってなる。ほんとマンガ的な映画だなあと。
魁!!男塾とか聖闘士星矢とかジョジョの奇妙な冒険とか、そういうのに近いかな。
トップガンのやつらの言動なんか、マンガやで。イキリ倒した中坊みたいなトップガンたち。軽口叩いて自信満々みたいなの、マンガでよくみるやつらやないか。
そう考えると、若い人でも楽しめるのかも。
年寄りは年月の積み重ねで楽しめるし、若者はマンガみたいで楽しめる。これはうまく作りましたね。成功した続編じゃないすか。