それぞれのパートで主役がかわって映画の雰囲気もけっこう違う。伊東のパートは青春サスペンス・ミステリー。父親の佐藤がどこへいったのか。なぜ消えたのかの謎ムード。父親が働いてる日雇いの現場行ったら父親の名前で若い男が働いていた。
その男の顔が手配中の殺人犯に似ている。父親が殺人犯を見つけたから懸賞金を狙うと言ってたことも気になる。警察に行って話しても父の失踪も殺人犯のこともまじめに取り合ってくれない。なんかすごいミステリーじゃないですか。
どうなんのかなあって見てたら、伊東蒼が全然出てこなくなる。清水尋也の話が始まる。清水のところは猟奇殺人犯が快楽殺人を重ねるのを見せていく。手口とか犠牲者とか。悪人が悪を重ねるのを見せる、ダークヒーローものみたいな感じ。
変態なんすよ。殺す相手に白い靴下はかせて、死んだところをおかずにオナニーするのが最高のエクスタシーっていうやつ。こんな危ないやつと佐藤二朗がどう知り合ったのかを描くのが後半。
佐藤のパートが一番奇妙でよくわからなかった。奥さんを殺すことになる経緯とか描いてて、感動?ヒューマンドラマ?っぽいのだけど、一番怖いのがこいつじゃないかみたいな、一番わけがわからない。
奥さんが難病で筋肉が動かなくなっていく病気で、それを苦にしてるところに清水が接触してきて自殺幇助しますよということになって奥さんは首吊りで殺される。妻は進行していく病に絶望して死を望んでいたし、その姿を見るのに耐えられず日々の介護で疲れ果てる佐藤も妻の死を望んでいた。
このパートは難病もの映画みたいなムードです。佐藤二朗と嫁の話にまったく伊東蒼が出てこないのはなぜなのか。完全に伊東蒼が姿を消している。伊東蒼をさがしてしまった。
ここからどうなるのかと思って見てると、清水が佐藤を誘う。SNSには生きているのが辛くて死にたい人がたくさんいる。そういう人たちを僕らで救いましょうって一緒に殺人をやることを誘う。そして佐藤はそれに乗る。なんでや?
どういう心理なのかよくわからなかった。もうこのへんになってくると、この映画の描きたいことはなんなのかをさがす感じになってきてました。戸惑うというか、困惑するというか。佐藤は清水を始末して自分に容疑がかからないように懸賞金もゲットする計画を思いつき実行する。
ほんとどういう気持なのかわからない。妻を殺したことで人の死を見ることに目覚めてしまったのか。清水に影響されてそうなったのか。わからない。
まあ、それで無事に計画は実行されてうまくいって、警察から懸賞金ももらってまた卓球場をやるかっていうほのぼのエンディングを迎えるのかと思いきやそうはいかない。
SNSで自殺願望者をつるためのアカウントのひとつが残っていて、そこに返信があって、待ち合わせで佐藤は会いに行く。え?まだ誰か殺したいのか?ほんとよくわからないんだよなあ。
その返信は娘からのものだった。伊東蒼は父のスマホの履歴から何があったのかを知り、父が人殺しであることをつきとめていた。
父と娘で卓球をしてラリーを続けているところに警察のパトカーのサイレンが鳴り響く。すべてを了解した父と娘は空の球でラリーを続けるのだった……。
わからない。奇妙な映画を見たなあって感じです。要素をいろいろいれすぎてなにがなんだかよくわからない映画になってたような気がした。親が頼りなくて孤軍奮闘する幼い少女の話、殺人鬼の話、難病の話、自殺願望の話、警察を欺く完全犯罪の話。
いろんな要素がまざりあって、最後は父と娘の人情話風でしめくくる。これはなんだったんだろう。つまらくはないし、むしろおもしろく見たけど、よくわからなくて奇妙なところがおもしろいって感じだったですねえ。