家族が謎の失踪をして崩壊していく家庭の再生と復活。そういう家族ドラマをSF的な小道具を使ってやってる映画なんすよ。そっちの家族ドラマのほうがメインでタイムトラベル設定はただの小道具です。
なかなかシリアスなドラマって感じの雰囲気で作られてて、低予算の小品って感じなんだけど、雰囲気は悪くはなかったです。タイムトラベルは最後のほうしか出てこない。それまでは父親失踪で崩壊していく母子家庭描写が続きます。
主演はハーレイ・ジョエル・オスメントで母親はジリアン・アンダーソン。
あの天才子役のオスメントくんが、こうなるとはみたいな。ひげもじゃのクマみたいなでっぷりとしたワイルドガイになってる。ジリアン・アンダーソンもXファイルのスカリーでおなじみですが、こういう映画にも出演してたんだみたいな。
それでお話としては、父親の不在によって崩壊した家庭を取り戻そうとする話なんだけど、なんか奇妙なんすよ、結末が。父親は量子力学かなんかの学者でタイムトラベルの方法を発見して装置を完成させていた。
それを使って1946年に行ってアインシュタインに会おうとして、強盗に殺されたから戻ってこれなかったというのが失踪の真相。それを知ったハーレイ・ジョエル・オスメントはおじいちゃんと一緒に父親の研究を解析。
どうにかして父親を止めることができれば、父親が失踪しない世界線に戻すことができて、母親の自殺もなくなるし、父親不在による家庭崩壊がなくなると思うわけです。
過去の出来事を改変して思い通りの未来を手に入れられないかともがく人の話。途中、恋人にそんなことするよりも、今のわたしとの生活、わたしとの人生を考えてよって言われて、そうだよなあ、過去にこだわっても仕方ないよなあって思い直す。
なんだけど、妊娠していた彼女が流産しちゃって、やっぱり過去を変えるしかないってなる。今の自分の人生がうまくいかないのは、全部父親が失踪したことが原因だっていうね。
なんか、それがちょっとどうかと思ったんだけどなあ。それに父親の失踪を阻止する方法もどうかと思った。
1946年にタイムトラベルした父親を追いかけて、ハーレイ・ジョエル・オスメントも1946年に行く。それで父親に自分が息子であることをあかして、父親がどうなるか、その後、家庭がどうなるかを話して今すぐ元の時代に戻ることを説得する。
でも、父親は家族より研究のほうが大事だから、ちょっとアインシュタインに会って話すだけだし、強盗にもあわないように注意するから2,3日してから帰るよとか、言うわけ。全然深刻に思ってない。
そこでハーレイくんがとった行動とは、銃で自分を撃って自殺して見せる。え?みたいな。ハーレイ・ジョエル・オスメントの自殺を止めたかったら、父親は今すぐ家に帰って、失踪がなかった世界線に戻るしかない。
嫁や息子にそこまで深刻な辛い思いをさせていたと気が付いた父親はすぐに家に帰りましたとさ、ちゃんちゃん。いやー、よくわからない。これはハッピーエンドなのかなんなのか。ショック療法か。
SF的なパラドックスとか時間を移動することによる矛盾とかそういうところは別にいいんですよ。気にはならない。ただの小道具だから。
ひっかかるのは、家族ドラマとして、父親と息子の話として、解決がそれでいいのかっていうことです。父親に家族のかけがえのなさを知らしめるために、自殺するというやり方で解決というのがどうも突飛すぎる。
父親が失踪したことに、人生の失敗すべてを結びつけてそこに執着してるのも、なんだかなあって思っちゃう。なんかもっと明るい、前向きな決着のつけかたってなかったのかな。なんか素直によかったねとは、まったく思えない終わり方だったなあ。