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『ハチ公物語』【映画のあらすじとネタバレ感想】


悲しすぎる。ハチ公物語ってこんな話だったんだ。もっとハートウォーミングな楽しい話かと思ってたよ。この映画を見るのは初めてだったけど、題名はハチ公残酷物語にしたほうがいいんじゃないかと思った。

忠犬ハチ公の話はなんとなくは知ってた。なくなった飼い主を待って駅に通う犬がいるって新聞記事かなんかになったんでしたっけ。それでハチ公の像とかも作られたとかでしたっけ。

犬なのに飼い主との絆がいつまでも続いてすごい忠義の犬だみたいないい話なんだけど、この映画を見るとペットを適当な気持ちで飼う人の犠牲になった犬だと思えてしまう。

まあ時代が時代だからなあ。今は犬や猫を家族のように扱って家の中で飼って、最後まで世話するのが当たり前だけど1930年ぐらいだとそういう感じじゃなかっただろうな。ほとんど野放しに近い飼い方してただろうし、犬猫をけっこう雑に扱ってた時代ですよねえ。

大学教授の仲代達矢が秋田犬をもらうことになる。愛犬を亡くしたばかりの仲代達矢と妻の八千草薫はもう犬は飼いたくないからもらわないと言うのだが、娘の石野真子がわたしが世話をするからと強く望むのでもらうことになります。

それで輸送されてきて、死んでんじゃないかっていうぐらいぐったりして到着するんだけど、石野真子はもう飽きてて犬に一切興味をしめしません。おいおいおい。ハチが届く前にすでにちゃんと世話する気がまるでないです。

犬?ああ、そういえばそんなこと言ったっけ?ぐらいの感じです。犬のことは忘れて、柳葉敏郎との恋愛に夢中になってる石野真子。おめーが世話するって言ったんだろが~って、わたしが親ならブチギレるところだよ。

まあ、これペット飼うときあるあるですね。子供が世話するから飼おうって騒ぐけど、飼ってみればまったく世話をしなくて、結局は親が面倒見ることになるパターン。子供に動物の世話なんかできるわけないんだよなあ。

石野真子は犬より恋愛に夢中。ハチの世話は書生の尾美としのりに丸投げだけど、尾美としのりも犬が好きってわけではないので雑な扱いです。お手伝いの片桐はいりも特別に犬好きというわけでもなく。

それでしかたなく仲代達矢がいろいろ世話するんだけど、朝は駅まで見送り、夕方は駅で待ってて仕事から帰って来るところをお出迎えしてくれるハチがかわいくてしかたなくなってくる。ハチ、ハチって言ってさ、一緒にお風呂に入ったり、猫可愛がりする。

かっこいいロックなハーネスをつけてもらったハチ。

嵐の夜にハチが犬小屋で濡れるのがかわいそうってことで、書斎にいれて一緒に寝たりもします。八千草薫に、わたしよりハチがいいんですねって呆れられるぐらいのかわいがりようです。ハチの幸せな時代。

このまま仲代達矢がハチを世話し続けてたら幸せなハチ公物語になったんだけど、仲代達矢が死んでしまう。こうなるともうハチは厄介者になっちゃうのです。誰もちゃんと世話しようとは思わない。

石野真子は柳葉敏郎と結婚。柳葉敏郎は外務省の役人かなんかでしたっけ。だからけっこう裕福で犬ぐらいは飼えるはずなのだが、石野真子はハチを引き取ろうとはしない。お父さんの犬でしょう、わたし関係ないわみたいな感じです。

八千草薫は家を売って娘夫婦と同居するんだが、ご厄介になるから遠慮してハチも一緒にとは言えないみたいです。その後、田舎に帰ることになるんだけど、やっぱりハチを連れていけない。

飼おうと思えば飼えるんじゃないのかって思えるのだが、みんなハチを飼おうとはしません。石野真子演じる娘がほんとひでえなって感じちゃうんだよなあ。もとはといえば自分が飼いたいって言ったのに、そんなことはまったく忘れてますよ。

ハチなんて最初からいなかったような無視っぷりで、残酷に見える。

それで親戚の殿山泰司のところに置いてもらうんだけど、そこの家も熱心に世話をするわけじゃない。ハチは脱走してたびたびいなくなり、仲代達矢の家に行っちゃう。もう別の人が住んでて、新しい住人は犬嫌いだから忌み嫌われるハチ。

ちゃんと飼ってくれる人もいない、行くところもないハチを植木屋の長門裕之の家が引き取る。奥さんが人情家でハチがかわいそうってことで引き取ってくれる。これでほっと落ち着くのかと思いきや、長門裕之が急死。奥さんは引っ越しするからハチを連れていけないということで、ハチは野良犬です。

まあ、昔は野良犬とかいっぱいいたんでしょうね。野犬っていうやつですか?焼き鳥屋の屋台のおっちゃんに鶏肉もらったりして、駅で来ることもない仲代達矢を待ち続ける。

その様子をおもしろいと思った新聞記者が記事にする。亡くなった主人を駅で待ち続ける忠犬ハチ公の記事が新聞にのると、それを読んだ八千草薫はいてもたってもいられなくて、ハチの元へとんでいく。

でも、やっぱりハチを飼うことはできないのです。また誰かに預けられるのを察知したのか、ハチは逃げてしまう。そしてハチは雪の日に力尽き、大好きな仲代達矢に飛びついてはしゃぐ幻影を見ながら昇天。

悲しすぎる終わり方だなあ。なんかやばいなと。感動の物語で悲しいんじゃなくて、悲惨で悲しい気持ちになっちゃう映画だった。

今だったら美談としてもっとぬるい感じで作っちゃうんじゃないすかね。ハチと大学教授の楽しい幸せな時間をメインに描いて、教授が死んで駅でハチが待ち続けてるところで終わり。後半、ハチが行き場なくてさんざんたらい回しになるのを延々と見せるのはなしで。

厳しいなあ。脚本は新藤兼人なんすね。だからなのかな。単なるぬるいいい話にはせず、厳しいひりつくドラマにしてる。どうかと思うけどね。もっとぬるい話でもよかったような。

この映画を見て思ったのは、動物を飼うときはちゃんと最後まで飼おうねということだった。大学教授の家で裕福な人たちでさえ、犬一匹ちゃんと世話できない。できないというよりする気がないっていうのが正しいか。

まあ、結局、ペットはそういうもんだから仕方ないのかな。人間を楽しませるための存在。おもちゃみたいなもんだから、楽しくなくなれば捨てられる運命か。

犬にしろなんにしろ、世話するのはほんと大変なことだから、飼うとなったらよくよく覚悟をきめないとね。

実際のハチはちゃんと飼われてて、銅像の除幕式にも参加してたようです。よかったよかった。


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