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『病院へ行こう』【映画のあらすじとネタバレ感想】



意外と楽しくておもしろかった。90年代邦画のこういう日常の身近な舞台を題材にした映画って若いときは見る気にならなかった。病院、学校、教習所、葬式、相続とかさ、なんかそういう生活の中に密着した題材のコメディ映画ってやたらと作られてなかったかな。

伊丹十三監督の「お葬式」「マルサの女」のヒットからこの流れって始まったのかなあ。いや、それより前からありましたっけ。こういう系は若いときは映画ってもっとかっこつけてるもんだろって思ってるから、見る気にならなくてスルーしてたけど、今見てみたら、けっこうよくできてておもしろいんすよ。

真田広之が広告代理店のバリバリのしゃかりきバブルサラリーマン。仕事仕事で嫁の斉藤慶子をほったらかしで浮気とかしちゃったりでやりたいほうだい。ある日、妻の誕生日なんすけどね、全然覚えてなくて普通に帰宅してみると斉藤慶子が見知らぬ男、大地康雄と野球拳してる。

え?何?、浮気?って揉め事になって、逃げようとする大地康雄を追いかける真田広之は長い階段を上から下まで転げ落ちて大怪我を負う。大地康雄も一緒に大怪我。そんで入院生活が始まるっていう話です。

嫁には愛想つかせられるし、浮気現場にいた大地康雄と相部屋で入院。同部屋の患者たちはうさんくさいやつらがそろってる。入院中に起こる騒動をおもしろおかしく描くコメディ。病院内幕モノでもあります。

真田広之と大地康雄を受け持つ医者役が薬師丸ひろ子。まだ研修医で新米です。この3人がメインキャスト。後半少しシリアスな展開もありますが、基本的にスラップスティックコメディで軽いノリで見れる映画でした。

この時代はまだ医者の情報開示にうるさくなかったですね。患者に病名を告知しないのが当たり前。検査や手術の必要性を患者によく説明もせずに医者側が勝手にすすめていく。今はインフォームドコンセントとかで告知するのが義務になってるんだっけ?

真田広之が若いですね。冒頭の階段落ちのシーンは本人がやってるみたいです。さすがの身のこなしで、めちゃくちゃ長い階段を見事に上から下まで転げ落ちていきます。いや、すごいもんですな。

階段落ちって安全にやると転げ落ちてるように見えない。かといって、本当に思い切り落ちるとほんとに大怪我しちゃう。ちゃんと危なく見えて、かつ安全にという動きはプロじゃないとできない名人芸ですね。

本気のアクションができるという真田広之の利点をいかしたコメディシーンがけっこうあっておもしろいです。なんせ大腿骨骨折で入院なので、最初はほとんど動けない。体を洗ってもらうシーンとかあって、サービスショットかみたいなとこもあります。

やっぱり真田広之ってこういう軽い奴の役が似合ってますね。身軽な体捌きを生かしたコメディな役柄が生き生きとしてていい。今はハリウッド映画でメインキャストじゃないけど、ワンシーンだけ印象的な見せ場あるちょい役で出てくるみたいな感じだけど、がっつりコメディな映画で主演とかしてるのを見てみたいもんです。

大地康雄もいいですね。顔がいいもんね。味がありすぎる。若くてスマートなイケメン真田広之とおじさん大地康雄の凸凹コンビ。

真田広之が口から血を吐いて、胃潰瘍があるってなって、これは実は癌が見つかってとかシリアス路線が始まるのかと思ったら、ガンの疑いをかけられるのは大地康雄のほうでした。胸に影があるとかで、結核か末期の肺がんの疑いが浮かび上がる。

薬師丸ひろ子は、痰から採取した細胞を培養して結核菌があるかどうか判定を待ちたいのだけど、胸担当の伊原剛志は手術で胸を開いて中見たら一発でわかりますよ、と手術する段取りを決めていく。

真田広之は大地康雄が薬師丸ひろ子に惚れているのを知って、仕返しのために薬師丸ひろ子と男女の仲になります。そのうえ、大地康雄にガンの疑いがあることに気がついて、ちょっといい気味だと思う。

でも大地康雄と一緒に病院を抜け出して町に繰り出して飲み食いして大騒ぎして話を聞いたことで、斉藤慶子とは浮気相手でもなんでもなく、その日に偶然誘われて家に行って手を出す前に真田広之が帰ってきたから何もなかったとわかる。

大地康雄は花火職人で右手が怪我かなんかでうまく動かなくなってリストラされた。酔っ払った大地康雄と真田広之が花火の会社に乗り込んで大騒ぎ。

真田広之は大地康雄にいい感情をもってなかったけど、付き合ってみると悪いやつじゃないなって思うようになります。

病院を抜け出して夜の町に繰り出すシーンよかったなあ。車椅子で地下鉄のってエスカレーターも車椅子のまんまでいって、立ち食いそば食ったり居酒屋で飲んだり、同部屋だったやつがやってるゲイバーで飲んで騒いで寿司食って。

そのバーのママがやる芸がまた下品なんだわ。江頭2:50がやりそうなことすんの。四つん這いになってけつに花火を差し込んで、わたしホタルよ~って。ひでえ~みたいな。いやー、この病院脱走のシーンおもしろかったです。

真田広之と大地康雄が最初いがみ合ってたのが、だんだんそうでもなくなっていくというのはコメディで定番の展開でしっかりできてるなあと。

それでエンディングはハッピーな感じで終わってくれてよかった。大地康雄は結核で肺がんじゃなかった。真田広之が大地康雄にあてつけて薬師丸ひろ子に手をだしたことも、ラブレターの返事を真田広之が書いたことも、まあみんなチャラかなみたいな。

最後、大地康雄が右手一本で折り鶴を折って見せて花火職人として復活するぞという希望をもたせるシーンもあります。病院の外では退院する真田広之を待つ斉藤慶子。こっちも離婚寸前からまた復活できるのではという希望あるラスト。

病院は骨折だけじゃなくて、人間関係も治してくれたんだみたいな。

薬師丸ひろ子もコメディエンヌとしての魅力爆発してましたねえ。尾美としのりとの食事シーンとか看護師の友達との飲みのシーンとか、注射の練習からの真田広之とのラブシーンとか、コミカルな演技がおもしろかわいくてよかった。

なんだろな、コメディをちゃんと演じられる、タイプの違う3人が集まってうまくまわってた感じします。

ただの薄っぺらいドタバタコメディかとおもったけど、監督が滝田洋二郎なので人情ドラマとしてちゃんと作ってあるんすよねえ。だから今見てもけっこう楽しめました。というか、年取った今だからこそ楽しめたのかも。

十代や二十代の粋がってるときには、こういう人情ドラマコメディはよさがわからないですね。年取ってくるとこういうのがちょうどよかったりします。


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