ロバート・レッドフォードは金持ち。なんだっけ、レンタカー事業かなんかで財を成したお金持ち。ヘレン・ミレンとの夫婦仲は冷え切っている。子供たちは成人してるし、半分引退生活みたいなもんで優雅に暮らしてます。
まあそれでいつものように車で出かけようとしたところでウィレム・デフォーに誘拐される。車が昔のレクサスで、この時代のレクサスはほんとラグジュアリーな感じするなあって思った。ヘレン・ミレンは夫が帰ってこないので警察に届けて誘拐されたことがわかって、そっからどうなるか。
ウィレム・デフォーに誘拐されて山の中を歩かされるロバート・レッドフォード。ウィレム・デフォーが言うには、誘拐の主犯が山頂で待ってて俺はそこまで連れて行く役目だっていうわけ。山登りさせられるロバート・レッドフォードは、それまでの人生やヘレン・ミレンのことを思い返す。
一方、ヘレン・ミレンのほうも誘拐犯からの連絡を待つあいだに人生のことやロバート・レッドフォードのことを思い返す。
誘拐そのものは主題じゃないんすよねえ。誘拐事件がおきたことでロバート・レッドフォードやヘレン・ミレンが人生を振り返って、お互いへの愛情がまだ残っていたということを再発見するっていうところがメインの話です。
ウィレム・デフォーが誘拐事件をおこそうと思ったのはお金が目的じゃありません。身代金をまんまと手に入れて犯行を成功させたのに、なにも満足していない。お金のナンバーは記録されていることがわかってるのに、近所のスーパーで目立つように使う。まるで捕まえてほしいかのように。
自分の人生にたいする不満というか、こんなはずじゃなかったという思いが誘拐事件に走らせた。自分も大物になれるかもと思っていた若い時代が過ぎ去って今、中年を過ぎた自分は大物でもなんでもなく大金持ちでもなんでもなく、そんな気持ちを理解してくれない嫁と一緒にさえない人生を生きている。
それがもうやりきれなくて、若いときにちょっと面識あって、こいつは大物だとみんなから言われていたロバート・レッドフォードを誘拐して亡き者にする。自分が手にできなかった人生への復讐っていうことなんだろうか。
誘拐事件の結果は悲惨な結果なのに、なぜかみな安らかに見えてしまうという不思議な映画。ロバート・レッドフォードは妻に最後の手紙を残す。ヘレン・ミレンは夫への愛情がまだあったことを再確認。ウィレム・デフォーは目的を完遂して思い残すことはない。
みんなが誘拐事件で手に入れたいものを手に入れた。