あとはマーゴット・ロビーのバービー度の高さがすごい。うわー、ほんとバービー人形みたいだ~って圧倒されるビジュアル。最初のほうのびしっと決まった隙のない美しさもすごいですが、
最後のほうでもうやる気なくして、わたしなんかきれいじゃないしなんもできないしってすっぴんみたいな感じで泣いてるときの少女のような表情とかすごかった。
マーゴット・ロビーが言っても説得力ないよねってナレーションがツッコミいれてましたけど、いやーほんとそう言いたくなるのはわかる。
お話はバービーランドで楽しく暮らす標準型のバービー、マーゴット・ロビーに変化がおきる。死について考えてしまったり、ハイヒール仕様のつま先立ちの足首が、まっすぐフラットになってしまったり、太ももにセルライトができたり。
賢者ヘンテコバービーに聞くと、人間界でバービーの持ち主だった人間に変化があってその影響でマーゴット・ロビーがおかしくなってるらしいと。じゃあ、人間界に行って持ち主に会ったら元通りってことで
バービーはバービーランドから現実世界へ旅に出る。ケン、ライアン・ゴズリングも一緒に。バービーランドはバービーがメイン、バービーが支配する世界なんすよ。ケンはバービーの付属品でしかない。だからケンはいつも不安でどうにかバービーに振り向いてほしくて必死でおどおどしてる。
それが現実世界にくると、男のほうが支配者で男は男っていうだけで偉そうにしてる。ライアン・ゴズリングは男性優位社会の楽しさに酔い、マッチョな男が支配する世界という思想をバービーランドに持ち帰り、バービーランドをケンの世界に塗り替える。
バービーランドをケンダムに作り変えてしまう。マーゴット・ロビーのほうはというと、持ち主が高校にいるってことで会いに行く。バービーによって女の子の夢が広がって女性の地位向上がすすんだから、功労者として歓迎されると思ったら、
あんたのせいで50年は女性の権利獲得がおくれた、このクソ野郎って思いっきり罵倒されてしまって、悲しい気持ちになってさめざめと泣いてしまうマーゴット・ロビーバービー。
思ってたのとは違う現実を見て泣いちゃうバービー。こんなつもりじゃなかったのにって。マテル社はバービーの回収にのりだし、ケンはバービーランドを支配し、さてどうなるかっていうね。そんな感じです。
ビジュアル、映像はなかなかよかったんだけど、話のほうがなあ。ちょっとこれはどうかと思う感じでした。やりたいことはわかるんだけど、その見せ方があまりうまくないって感じ。
セリフで長々と話ちゃう。物語で観客が感じるようにはなってなかった。短絡的にセリフでそのものを言っちゃう。もうちょっとさ、物語でなるほどなと思わせてほしかった。
せっかく映像はいいのになあ。チープで人形ごっこしてる感じがよく再現されてるバービーランドの映像はけっこう好きだったです。
みんなバービーだし、みんなケンなのがおもしろい。職業や人種や体型がいろいろ異なるけど、全員バービー。ケンのほうもいろんなバージョンがあるんですね。バービー人形ってこんなに種類あるんだってびっくり。
妊婦のバービーとかもいて、それは廃盤らしくてあまりみんなふれたがらないみたいな扱いなのがおもしろかった。なんかよくわからないけど、背中にテレビが埋め込まれたバービーとかもあるんだ。いったいどういうつもりで作ったんだ?サイバーパンクが流行ってたのかな?みたいな。
まあ、現実世界のほうもあまり現実という感じはしないんだけどね。とくにマテル社の描写とか、これ現実じゃねえだろ、マンガじゃないかって感じだし。
社長が悪いやつかと思ったら、意外といいやつで笑えたというか、別にいいやつではないけど、少女たちの夢をかなえるためにバービーを作って売ってるんだ、少女たちの夢をかなえる、キモくないやり方でなって言ってたのがおもしろかったなあ。
本気で自分がやってることがいいことだと思ってるやつっていうね。この映画全部がそう。自分が思ってること、信じてること、やってることが当たり前で、正しいか正しくないかなんて考えたこともないキャラクターたちが、
なにか変だな、ほかにもあるんだなって思い始めて騒動になるっていう。
お笑いのネタ、コントを見てるみたいな感じがしちゃって、映画を見てるって感じがあんまりしない。コントの連続って感じ。けっこう頭でっかちじゃないと面白みがわからないようになってる。
皮肉というかアイロニーっていうか、毒舌というか、さらっとずばりときついこと言ってておもしろいんだけど、それは前提とか背景とかの知識がある人向けであって、無意識で見てる人には面白みはあんまり届かない。
このネタわかる人には笑っちゃうネタなんだろなっていうのが、大量にある。そこがピンとこないときびしい。
だから小難しい映画なんすよ。こんなにポップな見た目でコメディなのに、小難しいから変な映画なんだ。
ビジュアルのポップさで間口は広いんだけど、中身はマニアックというか。なんか楽しそうぐらいで見た人をぽかんとさせる中身というか。けっこう難しい映画だったなと。
ああ、これはこういうことを言ってるんだ、これはあれを皮肉ってるんだって、考えながら見る映画になってて、お勉強映画みたいな感じがした。いちいち立ち止まって、どういうことだっけ、これってって考えてしまって映画に入り込めなかった。
冒頭の2001年宇宙の旅パロディからしてそうだもんね。猿が骨という武器を手にしたことで進化が始まったというシーンを、女の子が赤ん坊人形でままごとさせられて子育てや家事の予行演習をしているようなところから
バービーという母ではない人形がでてきてそこから変化が始まったというのを、子供が赤ん坊人形をぶっ叩いて破壊していくっていうシーンで見せる。これがスタートだもんね。
最初から小難しい。キューブリックの2001年を知ってれば、ああなるほどねってなるけど、知らなかったらなんか過激なの始まったなぐらいだし。
そして最後は、みんな一人ひとり、ただのケン、ただのバービーでいいんじゃないか。やりたいことは自分で決めるもんだよみたいなところに着地。
肩書や社会のなかでの役割や、他人からのレッテルや慣習で自分とはこうだと決めるのではなく、自分のほうが自分はこうなんだと決める、認識することから始めようみたいな。
自己探求ってことでいちおう結論つけたのかな。
いやー、なんかやっぱり小難しい感じがしちゃったなあ。もうちょっとなんか見てるあいだは何も考えずに笑える感じで作ってほしかったかな。
いちいち考えてしまう。このセリフは、あれの皮肉だなとか、これは昔はこれが普通だったのを茶化してるんだなとか、意味とか意図とかが頭にちらついて映画にはいりこめない。一歩引いて外から映画を見てしまう。
これってさ、映画の中で男がよくやるムーブとして、ゴッドファーザー見てないというと、頼んでもないのにいかにゴッドファーザーが傑作か語りだすっていうのを笑ってたけど、このバービーという映画でもそれおこりそうで笑ったけどね。
バービー見たけど、あれなんだったの?っていう女の子に、それはこういうことが昔あってそれを茶化して笑いにしてるんだよって長々と説明しだす男みたいな。ふーん、(話長いな)みたいな。
いやー、すごい映画ではあるんだよなあ。ネタ満載だし、情報量多くて刺激が強い。
ケンが戻ってケンダムを作るんだけど、バービーたちは反対するどころかノリノリで父権的な世界を楽しんでしまう。大統領や裁判官や医者や作家とかだったのに、男のそばで男の言うことに笑ってしたがってるだけっていう状態を
新しくて新鮮なことだと受け入れてしまっているのがおもしろかった。何も考えなくていいし、難しいことやんなくていいし、なにこれ楽しーみたいな感じでバービーたちが楽しんでたのがほんと笑える。
で、その洗脳をとくために、冷静におかしいということを面と向かって長々と言って聞かせるっていうのも笑えたね。そんなやり方で~みたいな。どっちかというと、それのほうが洗脳っぽいんだけどみたいな。
前半はバービーが主役で中盤はケンが主役だったなあ。ケンが存在意義が見いだせず悩んでいるところに父権的思想が救いになってドはまりする。そりゃそうだよなあ、バービーランドではバービーがすべての要職についてるし、才能や技能があるのもバービーで、道路工事の肉体労働でさえバービーがやってる。
ケンはバービーの友達でビーチにいる男ぐらいの意味しかもたされてない。そりゃ病みますね。
後半はバービーの創始者のおばあさんの幽霊が出てきたりとかして、マーゴット・ロビーをはげましたりとか、しんみり泣かせるムードを作ってきたりとかもする。
盛りだくさんで濃いなとは思ったけど、おもしろいとは、いや、楽しくないっていうか、なんかお勉強してる感じになっちゃって試験勉強に追われてる気分になっちゃうというか。
見てるときにおもしろいというより、見たあとにあれこれ考えておもしろくなってくるみたいなタイプっていうかねえ。
エンドロールで歴代バービーの紹介がされてたけど、すごい種類出てるんすね。知らなかったなあ。
女の子には母親になるだけじゃなくて、いろんな可能性があるんだということで多様性を見せるためにいろんなバービーが登場してるんですよね。
でも、そこからさらにすすんで、この映画のなかではなんでもない普通のただのバービーを売りましょうって最後になってた。肩書も設定もなんもない、素のバービーですかね。どうなるかはあなた次第だっていう。
いやー、でもこれってどこまでいくんだろう。社会や他者は関係ない、自分のなかでどうなのかが重要で、わたしはわたしであると認識するところから始めて深ぼっていく。はたしてその先に幸福があるのだろうか。
なんだか小難しい映画だった。